瀬戸内小話01


〔瀬戸内:子孫、トリップ編〕


ザッパーンと豪快な音と水飛沫を上げて二人は沈んだ。

(この恨み晴らさでおくべきか…)

(なにこえぇ事言ってんだよ!)

ようやく見えた光に二人はぷはっと息を吐き出した。

「…おい、貴様。いつの間に俺を海に連れてきた」

周りには視界を遮るものはなく、何処までも海が広がるばかり。

「オレかよ!って、確かオレ達川に落ちて…」

「俺は貴様に落とされたのだ」

「………!」

睨み合う、いや一方的に睨まれている人物の耳が自分達以外の音を拾う。

「泉!船が近付いてきてる!」

二人は首を巡らせその船を見つけた。

その頃船上では…、

「アニキー!海に人影が!!」

「人影だぁ?こんな海のど真中にか?」

アニキと呼ばれた船の持ち主は船首に立って海上を見下ろした。

するとそこには部下の報告通り二人の人間が。

居たわけだが…、

「おい、そこの眼帯!俺を助けろ」

「わっ!馬鹿!助けてもらうのに何で上から目線、命令形なんだよ!」

なんだありゃ?

「すいませーん!助けてもらえませんか?」

肩の上辺りで揃えられた短い髪の少女が船に向かって手を振り、その隣で「俺は馬鹿ではない。貴様と一緒にするな」と、ぶつくさ文句を言う少年がいた。



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