01


昼休みの終わりを告げるチャイムが遠くで聞こえる。

俺達は言葉を交わすでもなくフェンスに背を預け、空を見上げた。

今日もいい天気だな…。

眩しさに目を細めて俺はポケットに突っ込んでいた右手を顔の前に翳した。

「なぁ」

すると、今まで沈黙を保っていた隣の人物が口を開いた。

「ん?」

俺は同じ様に青い空を見上げている、俺より僅かに背の高い隣の男に視線すら向けず答えた。

「お前、俺の事好きか?」

相手も空から視線を外すこと無く会話を続けた。

「好き」

俺はその問いに考えるまでもなくそう返していた。

「政宗、お前は?」

俺の事好きか、と俺は確認するように聞き返す。

「さぁ?」

なのに政宗ときたらニィッと悪戯っぽく口端を吊り上げて俺を見返してきた。

右手を下ろし、空から視線を隣の政宗に移して俺は苦笑を浮かべた。

「空にヤキモチか?」

「そうだ、と言ったら?」

まったくそんな素振り見せてくれない癖に。

尚も笑みを浮かべる政宗に俺は反撃に出る事にしよう。

「嬉しいね。でも、安心しろよ。空はお前の色だから好きなんだ」

そう返ってくるとは思わなかったのか政宗の眼帯をしているのとは反対の、左目が驚きで僅かに見開かれる。

だって青色は政宗の好きな色。政宗を表す色だろ?

してやったり、と満足げに笑うと政宗は驚きを納めて苦笑をその顔に浮かべた。

「そうくるとは思わなかったぜ」

「で…?」

俺は先程の返事を促す。

「もちろん好きに決まってんだろ」

「決まってんだ?」

「Yes.」

自信満々に頷かれて、腰を抱き寄せられた。

「そりゃ身に余る光栄だな、政宗様」

俺も政宗の首に両腕を回し、強気な笑顔を浮かべた。

「ha、言ってろ」

互いに軽口を叩きあって、どちらからともなく唇を重ねた。

「んっ…」

啄むようにキスを交わし、俺の鼻からはくぐもった息が漏れる。

「慎…」

「…ん、政宗」

チュッ、と最後にリップ音を立てて政宗が離れていく。

なんだかそれが寂しくて、俺は政宗の首に回していた腕に力を込めて引き留めた。

「どうした?」

「んー、もう少しこのままがいいなって思って」

そう言って、不思議そうにした政宗の胸に顔を押し付けた。

「…そりゃ反則だぜ慎」

「ん?」

「可愛すぎんだよ」

ぎゅっと腰に回された政宗の腕に力が入り、開いた距離がゼロに戻った。

なんか俺ってすげぇ幸せ者…?

ふっと政宗に見えない位置で俺は口元を緩めた。

「ん。もういいよ政宗」

満足したところで俺は政宗の胸から顔を上げた。

「そうか?俺はいつだって歓迎だぜHoney」

ニヤリとそう笑って政宗は俺を解放した。

「んじゃぁまた今度頼むわDarling」

ははっ、と笑い返して俺はフェンスに寄り掛かり意地悪く笑う政宗の足元に片膝を立てフェンスに背を預けて座り込んだ。

そして、校内へと続く扉の方へと視線を向けた。

「誰か来たな」

政宗もそれに気付き視線を投げる。

バタバタと慌ただしい足音が次第に近づき、次いでバァンと勢い良く扉が開かれた。

「総長!紅虎の奴等が総長を出せと校門の所まで乗り込んで来やした…!!」

「っと、副総長も御一緒でしたか」

駆け込んで来た奴等は俺と政宗を見るなりどこかホッとしたような顔をした。

俺はその報告に座ったまま首を巡らせ正門の方を見下ろした。

「あ、本当だ。どうする政宗?」

「真田か。懲りねぇなアイツも。まぁいい、返り討ちにしてやんぜ」

ギッと音を立て、フェンスから背を離した政宗に倣い俺もよいしょ、と立ち上がって服についた埃を落とした。

「そういいながらお前、楽しんでるだろ」

「さぁ?」

肩を竦め、ニッと笑った政宗にやれやれと苦笑を漏らし俺は政宗の後を追った。



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