03


失敗した、かも。咄嗟に動いてしまったがこれはヤバかったか…?

とりあえず俺は敵ではないと示すために両手を挙げてみた。

「Hey、てめぇ何処の忍だ?」

何処、と言われても。一応俺は伊達軍です。貴方様の所の忍ですとは言えないよなぁ。

「……ただの通りすがりです」

「ふざけてんのかてめぇ」

政宗様の後ろから迫力のある低い声が。

「Stop、小十郎。通りすがりねぇ…。What your name?」

これは名乗った方がいいのか?いやでも俺忍だし。

「………」

そして、自問自答している間に政宗様の接近を許してしまった。

「―っ!?」

「答えろ。さもなきゃ命が散るぜ。you see?」

刀を突きつけられ脅される。

あまりに政也様に似ているせいか気が緩んでいたようだ。

政也様、俺は貴方の御先祖様の手に寄って消されるかもしれません。

でもその前に。

「あ〜、っと。俺の前にそっちの忍を片付けた方がいいんじゃないですか?」

「ah?ンなこと言って逃げようったってそうはいかねぇぜ」

ギロリと鋭い隻眼で睨まれ背筋に震えが走る。

「いやいや違いますって。逃げようとしてるのは俺じゃなくて向こう」

そう言って指した先にはどさくさに紛れて逃げようとしている忍がいた。

小十郎、と政宗様が一言言えば小十郎様は心得たように頷いて逃げ出そうとした忍を捕らえ縛り上げた。

おぉ、見事な連携。

「さ、心置き無く吐け」

って関心してる場合じゃなかった。

「あ〜、言っても信じてもらえないと思うのですが…」

困ったように笑えば、といっても布で表情は分からないだろうが。政宗様はニイッと口端を吊り上げた。

「信じる信じないは俺が決める」

you see?と低音で威圧され俺は渋々口を開いた。

「所属は一応伊達軍です。伊達軍黒脛巾組(くろはばきぐみ)忍頭、八神 慎と申します」

刀さえ突きつけられてなきゃきちんと膝をついて頭を垂れて、挨拶するんだけどなぁ。

「黒脛巾組?お前みたいな奴はいなかったと思うが?」

眉をひそめた政宗様に俺は説明する。

「そうでしょう。私は第十七代目伊達家当主政也様に仕える身。ちょっとした手違いで過去に飛ばされてしまったようです」

そう告げれば回りにいた伊達兵がざわりと騒いだ。

「証拠は?」

「残念ながらありません」

それからしばらくジッと睨み合いが続いた。

「…OK、信じよう。どうやら嘘は吐いてねぇようだ」

「なっ!政宗様!信じるのですか?他国の間者やもしれませぬぞ!」

小十郎様が反対するように声を上げる。

「小十郎様の言う通り。私は忍ですよ?伊達の忍を装った敵かもしれない。そう簡単に信じていいのですか?」

まさか俺も信じてもらえるとは思わなかった。

だからつい心配になって自分に不利になる事を口にしていた。

「No problem。コイツは敵じゃねぇ」

敵だったら俺が狙われたのを助けたりしねぇ。

それに俺達はコイツの存在に現れるまで気付かなかった。敵ならわざわざ姿を現すなんて危険な真似はしねぇでさっさと殺ってるだろうよ。

「第一自分から敵かもしれないのに、なんて忠告するか?」

政宗様の言葉に伊達兵はおぉ、とか流石は筆頭ッス!と何故か感嘆した声を上げた。

ノリ良いなぁ、おい。

「たしかに一理ありますな。ですが未来から来たと言う妄言、信じるのですか?」

「小十郎。俺の目が信じられねぇか?」

「いえ、そういうわけでは…」

「ならいいだろ。コイツを城に連れて帰る。慎とか言ったな、Come on!」

「御意」

俺の意思は無視なのね。まぁ、慣れてるからいいけど。

それから捕らえた忍を連れて俺達は森を抜けた。

城下はあまり変わってないんだなぁ。

あ、あそこ小間物屋じゃないんだ。

俺は伊達軍一行から少し離れた場所を進む。

だって忍が真っ昼間から堂々と歩けないでしょ?どこかの忍じゃあるまいし。

城へ着き、捕らえた忍を牢へと入れるよう指示を出した政宗様は俺を呼んだ。

「慎」

「はっ。何でこざいましょう?」

スタッと政宗様の前に膝をつき、頭を垂れた。



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