02
「おい、アンタ!」
男は真哉に気付いたのか切羽詰まった声を上げ、駆け寄ってきた。
「アンタも仲間だろ?だったらコレを、…高杉さんに届けてくれ!」
懐に手を差し入れた男はそこから掌サイズの黒いチップを取り出す。
高杉って誰だ?
それに俺は、
「アンタの仲間じゃ…」
「居た!見つけたぞ!」
「もう逃げられんぞ!」
否定の言葉は次に角から現れた男達に遮られた。
何が何だか解らぬうちに真哉を仲間だと勝手に勘違いした男からチップを押し付けられ、後から現れた、黒いお揃いの服を身に付けた男達と対峙するはめに。
「俺が囮になる。アンタはその隙に逃げてくれ」
こっそりそう言われた真哉は面倒は御免だと一つ頷く。
「今だ、行け!」
バッと黒服達に向かって飛び出して行った男の合図に、真哉はとりあえず逆方向へと駆け出す。
「逃がすな!女も捕まえろ!」
後ろへ流れた長い黒髪と、その声に自分はまだ変装していたんだと真哉は思い出した。
そんな事より何処へ逃げりゃいいんだ?
走っていた事で気付いたがここは俺の知らない場所だ。
変な人間じゃない奴等がうようよ居やがる。もちろん人間もいるが。
…にしても気持ち悪ぃ。何だアイツ等。叩き斬ってもいいかな?
物騒な事を考えているうちに先程とは別の黒服達に囲まれる。
そりゃそうだ。逃げろと言われても俺はここが何処だか分からない上、地理も分からない。
「観念しろ女」
「痛い目に合いたくなければ大人しく投降しろ」
何なんだいったい。
良く分からないが刀を突き付けられ、真哉の心が決まる。
「高杉の居場所は何処だ?」
また高杉かよ。
真哉は溜め息を吐くと、思わせ振りに口端を吊り上げゆっくりと口を開いた。
「知りたい?教えて上げたいのは山々なんだけど…」
スッと瞼を伏せ、目にも止まらぬ速さで抜刀。黒服達の間を風の様にスルリと駆け抜けた。
「残念。俺が知りてぇぐらいだ」
カチン、と刀を鞘に納めた音が響き、次いでドサドサと黒服達は地面に倒れ伏す。
赤い液体がジワジワと広がり地面に染み込んでいく。
「さぁて、これからどうするかな」
手の中にあるチップをポンと投げ、落ちてきたそれを左手でキャッチする。
先の事は歩きながら考えるか。
まずは、ここから離れよう。
チラリと自分で斬った黒服達を冷めた目で見下ろし、歩き出した。
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