03


ため息を吐き、項垂れる直人に、政宗は言葉を落とす。

「まずはいつきに謝ることだな。その後、お前等の処分を決める。…咲夜!」

話を一通り聞いていた咲夜はいつきの手を引いて、円の中心にいる政宗の元へ歩み出た。

「あ…、いつきちゃん」

直人はいつきの姿を目に止めると弱々しい声を上げる。

政宗は側で尻餅を付いている二人も仲間に拘束させるといつきに言った。

「いつき、お前の好きな様にしろ。二度と顔も見たくねぇってんなら俺達が近付けさせねぇようにしてやる」

「ん、だども…今見てて分かった事もあるべ。こん人達、そんなに悪い人でねぇ気がするべ。皆と一緒で仲間を見捨てたりしなかっただよ」

「いつきちゃん」

咲夜はソッといつきの手を離し、いつきを見守る事にする。

「なしてオラの店に入り浸ってたべか?何か理由があるだべ?」

直人の前にしゃがみこみいつきは真剣な顔で聞いた。

「そ、それは…あのっ、その…」

いきなり直球で問われ、直人は誰かに助けを求める様うろうろと視線をさ迷わせる。

「ha、男なら男らしく言えよ」

「政宗。こう言うのは焦らせちゃ駄目よ」

そして、直人は悩み、焦り、考え、混乱に陥った末、こう叫んだ。

「いつきちゃんと…と、友達になりたかったんだ!」

直人の向こうで彼の友人二人が不憫そうに直人を見つめていた。
その上さらに直人は無邪気ないつきに追い討ちをかけられる。

「友達だべか?良いだよ。でも、それならそうと早く言ってけろ!怖かっただよ!」

あっさり友達認定されたあげく、やっぱり怖がられていたのかと直人は嬉しいやら悲しいやら、とうとう地面に沈んだ。

「どうしただか?大丈夫け?蒼い兄ちゃん、もう離してやってけれ」

「OK」

政宗は直人の腕を離し、直人の上から退くと彼の友人二人に向き直る。

「で、てめぇらはどうすんだ?」

「「すっ、すいやせんでした!」」

睨んでもいないのに彼等は揃って頭を下げ、ペラペラと洗いざらい吐き出した。

「直人の野郎がいつまでたっても煮え切らねぇから俺達が無理矢理けしかけたんです!なぁ?」

「あっ、あぁ。そうだ俺達が。直人は別に来たくて来たんじゃ…いや、来たくて来たのか…?ん、あれ?ちがっ、と、とにかく直人は別に関係ねぇんだよ!」

言いたい事は大体分かった。

「ねぇ、政宗。いつきちゃんはこの件もう許したみたいだけど、…私から一つ条件付けてもいいかな?」

咲夜は軽く首を傾げ、政宗を伺う。

「条件?言ってみろ」

「うん。この三人をさ、北口商店街の親衛隊にいれたら良いんじゃないかと思って」

北口商店街の親衛隊とは、いつき親衛隊の事だ。

北口商店街のアイドルでもあるいつきちゃんが好きで、そのいつきちゃんを守る為に商店街メンバーで構成、発足された言わば北口のガーディアン。

あそこには抜け駆け禁止という鉄の鉄則が敷かれている。

「いつきちゃん可愛いし、そこの彼を信用してないわけじゃないけど心配だし。どうかな?」

「まぁ念には念をって言うしな」

政宗は頷き、全員の視線を自分に集めると良く通る威厳のある声でこの件の終わりを告げた。

「てめぇら三人は北口商店街のGuardianに入る事を条件に、他はいつきに免じて処分無しだ」

ガーディアンについて詳しい内容は、米屋の親父に聞け。総締めは彼処だからな。






多少武力行使はあったものの話し合いで決着が付き、咲夜は隣に立つ政宗を見上げる。

「お疲れ様。いつもながらカッコ良かったよ政宗」

「Thanks」

ふわりと微笑んだ咲夜の頬にお礼の言葉とキスが落とされる。

咲夜はそれを擽ったそうに受け止めて、頬を薄く紅色に染めた。

「いいなぁ〜、筆頭」

「俺も彼女欲しいー」

がやがやと周りは見慣れた光景に、羨む人はいても驚く人間はいない。

「おっ、何だ何だ?ストリートファイトか?」

「馬鹿、今は職務中だろ。気持ちは分かるけど喜ぶなら心の中でにしときな!」

そこへ、蒼い集団の円を割ってガタイの良い一人の男とすらりと背の高い一人の女が姿を現した。

「何だ、ちげぇのかよ」

「ガッカリしないの。それで、政宗、咲夜。この騒ぎは一体何かしら?刑事として聞いておかなきゃならないわね」

姿を現したのは同じく、カラーギャングの鬼船-キセン-。そのトップを張る長曾我部 元親とその彼女、皆川 海里だ。

この二人はカラーギャングに属す人間でありながら、仕事は刑事。どちらが先だったのかは知らないが、…会話からするに二人は今その仕事の真っ最中なのだろう。

「Hello.元親、海里!」

咲夜はとりあえず挨拶をして、後を政宗に任せる。

「特にこれと言って何にもないぜ?刑事に言うような事はな」

「…そう、いいわ。今は別件の捜査中で忙しいし、また別の機会にでも聞きましょ」

話してしまえば彼等は営業妨害で捕まるかもしれない。

「別の機会ねぇ?刑事のアンタ達に話す機会は一生ねぇと思うぜ。俺達が喋るとすればそれはこちら側の人間だけだ」

カラーギャングの世界には独自の法が存在し、警察の様にただ捕まえればいいというワケではない。

政宗は終わった話を蒸し返す事も、彼等を警察に引き渡す気もさらさら無かった。




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