05
街道に出た遊士は、出来るだけ敵の目が自分達に向くよう派手に動き回る。
「てめぇら!街道を占拠する勢いでやっちまえ!」
抜いた刀で容赦無く敵を切り捨て遊士が声を上げる。
「「Yeah――!」」
真似しなくても政宗と性格が似ている遊士は敵に怯むことなく、自ら先頭に立ち、斬り込んでいく。
そして、それを追うのは当然小十郎だ。
「遊士様!お一人で突っ込まれては…」
「No!俺は独眼竜政宗だ。俺の背はお前が守るんだろ小十郎」
you see?、と眼光鋭く兜の下で睨んだ遊士に小十郎は言葉を飲む。
その間にも武田の敷いた防衛線を次々と突破して行く。
「伊達軍だ!奥州の竜がいるはず」
「独眼竜は何処だ!討ち取って名を上げろ!」
わぁわぁと合戦は激しさを増していく。
陣中にいた幸村はいきなり伊達軍が現れたとの報告を受け、二槍を持って立ち上がる。
「何故このような場に現れたか分からぬが、伊達軍に会ったが我がさだめ、…指をくわえて見送るわけにはいかぬ!」
勢いのまま街道を抜け、遊士達は橋を渡る。
橋の先にある門を越え、先へ行けば奥州だ。
「ぐぁっ―!」
「こっから先は誰一人通さねぇぜ!」
斬り上げた刀を、振り下ろし遊士は門を背にするように振り向き、足を止めた。
視線を横に流し、遊士は無言で合図を送る。
―政宗を連れて先に行け。
彰吾は一つ頷くと、遊士達が敵の目を引き付けている間に、三人の兵士と共に政宗を連れて先へと進んだ。
「分かってるな小十郎」
「はっ。心得て下ります」
ここは誰一人通さねぇ、誰一人だ。
遊士と小十郎は門を背に、次々と襲い来る敵兵と斬り結ぶ。
「ha、ぼんやりしてると命が散るぜ!」
「死ぬ気で来い、手加減はなしだ…!」
彰吾達が安全な場所に着くまで、この街道から離れるまで、この場を死守する。
ガッと、突き出された槍を弾き懐に刀を刺し入れる。
「ぐぁぁ…!」
ずしゃと崩れ落ちる敵兵に、目もくれず遊士は無心に刀を振るう。
そこへ、
「待った待った待ったー!この街道は戦が要、渡すわけにはいかぬ!」
この陣の指揮をとる、真田 幸村が駆け付けた。
遊士は兜の下の瞳を細め、ニヤリと口端を吊り上げる。
「真田 幸村…。ここで会ったのも何かの縁だ。この前の決着つけようじゃねぇか?」
正確には政宗がつけるべき決着だ。
だが、今はそんなこと言ってる場合じゃねぇし。とにかく政宗の邪魔になりそうなコイツだけは潰しておかなければ。
チキッと刃先を幸村に向け、遊士は挑発する。
「Hey、Come on!真田 幸村ァ!」
「伊達 政宗…」
それに応えるよう幸村はぐっと二槍を持つ手に力を込め、構えた。
互いに足を踏み出し、槍と刀が鈍い音を立ててぶつかる。
「―――くっ!」
一撃が重い。刀を持つ手がビリビリと僅かに痺れた。
これを思えば、政宗との手合わせはきっと手加減されていたんだと分かる。
遊士は槍を弾き、一度間合いをとる。
それを好機と見たか幸村の槍が遊士を追う。
「烈火ァ!うぉぉ――!!」
二槍の鋭い突きの連続攻撃が遊士を襲う。
しかし、遊士は焦るでもなく口の端をユルリと吊り上げて見せた。
「ha、かかったな真田 幸村ァ!」
繰り出される突きを遊士は横に跳んでかわし、がら空きになっている幸村の背後をとる。
悔しい事に力はねぇが、スピードだったらオレの方が上だ。
「はぁっ――!」
刀を上から下に振り下ろした。
だが、ガッ、と音がして遊士の振り下ろした刃は槍の柄で防がれた。
「そう簡単に殺られはせぬ!」
咄嗟に機転を利かせた幸村は手の中で槍を滑らせ、背後を守った。
「Shit!」
槍と刀じゃリーチが違うんだ。
遊士はふむと冷静に思考を巡らせ、今度こそ幸村から距離をとった。
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