02
伸ばされた手に、身を包む熱に心が震えた
優しく触れてくる指先が愛しくて涙が零れた―…
□境界を越えて side:昼□
夜は覚えていなくてもいいと言う。初めて言葉を交わしたあの日を。
《…あいしてる、ひる》
「ぼくも…」
肌を合わせて伝わる想いに、夜から与えられる愛情の深さと優しさを知る。
瞼を下ろして、この身を包むぬくもりに微睡む。
この腕の中には怖さも悲しさも辛さもない。
ただひたすらに優しくて少しだけ熱い、幸せなものばかり。
だからこの腕の中は居心地が好くて、いつまでもこうしていたいと思う。
このまま離れることなくずっと一緒に…昼と夜の境界すら越えて交じり合えたなら…。
“しあわせ”だな…
無意識に、すぐ側に感じるぬくもりに頬を寄せれば、ふわりと柔らかな感触が唇に触れる。
その甘い接触に僅かに意識が震えた。
「ん…よる…?」
《起こしちまったか?》
「…ん、どうか…したの?」
ゆるゆると瞼を押し上げればふっと和んだ瞳が見つめてくる。夢現で口を開けば囁くような低い声が鼓膜を揺らした。
《いや。まだ朝には早い。ゆっくり眠れ昼》
「う…ん。よるも…いっしょに…」
《あぁ…、おやすみ》
おやすみと口を動かしたけれど言葉になったかは分からない。
それでもただ夜が優しく笑ってくれたような気配だけは感じていた。
愛しい温もりに包まれ、今夜もまた幸せな夢を見る―。
Rikuo happy birthday!
September 23, 2012
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