微睡み(子リク+総大将)


すやすやと聞こえる小さな寝息
あどけない顔を見つめる瞳は優しく
温かなぬくもりに包まれて―…



□微睡み□



葉を揺らす風が冷たさを帯び、秋から冬へと移り変わり始めた陽射しは遠く。
ぽかぽかと暖かかった頃に縁側にあった大小二つの影は、今は室内へとその場所を移していた。

畳に敷かれたお昼寝用布団にリクオを寝かせ、しっかりと胸元まで毛布を掛けてやる。

「おじーちゃんも…」

眠たそうにとろんとした大きな瞳が布団の側で胡座をかいて座るぬらりひょんを見上げて言う。

「ワシも?」

「ん…。いっしょに寝よ?」

掛けたばかりの毛布をぺろんと捲り、リクオは端に移動してポンポンと自分の隣を叩く。

「ふむ…、まぁよいか」

何故だかリクオは昼寝の時間になるとぬらりひょんの元へやって来て、ぬらりひょんもついついそんなリクオの面倒を見てしまう。
それでうっかり共に寝てしまった事もしばし。

ようは己に甘えてくる孫が可愛くて仕方ないぬらりひょんだった。

リクオの隣に身を滑り込ませ、片肘を付いて頭を支える。

嬉しそうに笑うリクオの頭を撫でてやれば、しだいにその瞼は下りていった。

どうやら眠気には勝てなかったようだ。

「ふっ、可愛いもんじゃな。そういや鯉伴も昔は―…」

すぅと小さな寝息を立てて眠るあどけない顔を、ぬらりひょんは瞳を細め愛しそうに見つめた。



それから暫くして寝息は二つになり、あたたかな静寂が室内を包んだ。



ふにゃりと幸せそうな笑みが溢れる。むにゃむにゃと小さな唇が動いて、すぐ側にあるぬくもりに擦り寄る。

「…ぅ…ん…」

「ん…?」

もぞもぞとすぐ側で動いた気配に、ぬらりひょんは閉じていた瞼をゆっくり持ち上げる。

「…ワシも寝てしもうたか。ん?…起きたのかリクオ?」

囁くような声で尋ねても、返ってくるのはすぅすぅという規則正しい寝息だけ。
ちらりと視線を落とした先には栗色の柔らかな髪。

着物の袷が大きく開いた胸元に、リクオはぴったり頬を寄せ、ふにゃふにゃに緩んだ幸せそうな顔で言葉にならぬ言葉を呟いていた。

「何じゃ、寝言か…」

己に引っ付いて眠るリクオを、穏やかな光を湛えた金の瞳が見つめる。
着物から覗いた肌を擽る栗色の髪に、ぬらりひょんは優しく指を絡め、後頭部に添って上から下へと梳いた。

「何の夢を見ておるんじゃか。幸せそうな顔しおって」

すると心なしかリクオの口許が嬉しそうに綻び、またむにゃむにゃと口が動く。

「…じー…ちゃ…」

今度は形になった言葉に、ぬらりひょんは一瞬虚を突かれ、次の瞬間にはふと口許を緩めていた。

「まだ寝てて良いぞ」

髪を梳いていた手を止め、その手でリクオの背をポンポンと軽く叩く。

「…ん…ぅ…」

「せっかくじゃワシももう少し寝るかの」

遠くから聞こえる自分を呼ぶ僕(しもべ)の声を聞かなかったことにし、ぬらりひょんは子供特有の高い体温に心地好さを感じながら、再び瞼を下ろした。



end



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