奴良組の中心(昼+α)


栗色の柔らかそうな髪
くりっとした大きな瞳を輝かせ
屋敷の中をちょこちょこと歩くのは―…



□奴良組の中心□



ふんふんと鼻歌らしきものを口ずさみながら、ご機嫌な様子で廊下を歩く小さな子供。

その手にはふわっふわの可愛らしい茶色のクマのぬいぐるみ。黒いつぶらな瞳に、クマの首元には青いリボンが付けられているのが見える。そのぬいぐるみを両手でしっかりと抱え、子供は時おり頬を埋めてはふにゃりと嬉しげに笑う。

「見て見て、首無!リクオ様よ。可愛らしいわねぇ」

微笑ましいリクオの行動に、少し離れた場所から見ていた毛倡妓もつられて表情を崩す。同じく隣にいた首無もその光景を目にして口元を緩めた。

「あぁ…。可愛いな」

んしょっと、ぬいぐるみを抱え直して尚リクオは廊下を進む。

「それにしてもいったい何処に向かってるのかしら?リクオ様の部屋は逆よね」

とてとてと、曲がり角では気を付けながら歩くリクオの後を、毛倡妓と首無は気付かれぬ程度に距離を開けて追う。

「う〜ん、こっちにあるのは確か総大将の部屋だけだと思うけど」

屋敷の中なら危険はないと思うが。

会話を交わす二人の視線の先でリクオの足が止まった。

クマを腕に抱いたままリクオはちょこんと首を傾げ、きょろきょろと周りを見回す。

「どうしたのかしら?」

リクオからは見えない位置にいた毛倡妓が不思議そうに呟き、それに首無が応える。

「襖が開けられないんじゃないか?」

まさにその通りで、リクオは周囲に誰もいないことが分かると行儀悪く足を使って襖を開けようとした。

「あらら」

「誰だリクオ様の前であんなことしたのは」

子供は大人が思っているよりも周りを良く見ていて、すぐに真似をしてしまう。

諌めに行くべきかと首無が思案したのと同時に、リクオが開けようとした襖が室内から開けられた。

「リクオ様。足で開けようなどと行儀が悪い。それから、よそ様の部屋に入る時は一声かけて…」

「よせよせ、牛鬼。リクオはワシに会いに来てくれたんじゃろ?牛鬼のことなど気にせず入れ」

リクオからしたらとっても背の高い牛鬼。見上げるように顎を反らして、リクオは咎められた事などまったく気にせずににぱっと笑った。

「みてみて牛鬼!可愛いでしょクマさん!お父さんとお母さんが買ってくれたの!」

ぬらりひょんにも同じ笑顔を見せてリクオはにこにこと言う。

どうやらリクオはクマのぬいぐるみを見せびらかしに来たらしい。

「ぅ…、まぁ、その。可愛い…のではないか?」

きらきらとした目で見上げられ、牛鬼は言葉に詰まりつつも何とか頷き返す。

「ほぅ、それは良かったのう。どれ、ワシにも見せてくれんかリクオ。もっとこっちに来い」

対するぬらりひょんはさらりと余裕の表情でリクオの欲しがっている言葉を送り、ちゃっかりリクオを自分の隣へと座らせた。



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