豆まき(昼+総大将+鯉伴)


福は内、鬼は外
福を招き、鬼(邪気)を払う
無病息災を願って―…



□豆まき□



「福は〜内!鬼は〜外!」

ぱら、ぱら、ぱら…。
ぱら、ぱら、ぱら…。

ふわふわと栗色の髪を揺らして、広い屋敷の中、庭や玄関、勝手口など主要と思われる奴良組の敷地内をちょこちょこと歩き回る。

左手に持った升に沢山の豆を入れて、小さな右手で掴めるだけの豆を握って投げる。

「次は?」

くるりと後ろを振り返って見上げてきたリクオに鯉伴は苦笑を浮かべて、その髪に手を伸ばした。

「そうだな、粗方終わったか…」

くしゃりと手触りの良い髪を撫でてやると、リクオはほわりと嬉しそうに表情を崩す。けど、もっと豆まきがしたいのかシュンと肩を落として言った。

「もう終わり…?」

「あ〜〜、っと。そうだ!後一つあるぞ。それで最後にしようなリクオ」

ぽふぽふと軽く頭を叩いたその下で、リクオはぱぁっと分かりやすいぐらい嬉しそうに華やいだ。

とてとてと廊下を進むリクオの後を鯉伴はゆったりとついていく。

「許せよ親父。これも可愛い息子の為だ」

そして、とある一室の前で足を止めると鯉伴はひっそり呟いて障子を開けた。

「ほら、ここなら良いぞリクオ」

「うんっ!福は〜内!鬼は〜外!」

ぱら、ぱら、ぱら…。
ぱら、ぱら、ぱら…。

畳の上に豆がころころと転がる。机の上で跳ねた豆がぱた、ぱた、ぱたと座布団の上に落ちた。

「お父さん、終わったよ!」

「おぉ、偉いぞリクオ」

やり遂げたと満足そうに振り向いたリクオを、鯉伴は頭を撫でて褒める。

そこへ、タイミングが良いのか悪いのか、この部屋の主が帰って来てしまった。

「豆まきをしておるそうじゃなリクオ。どれワシも…って、何じゃコレは!?」

室内にばらまかれた豆に部屋の主、ぬらりひょんは声を上げる。

「鯉伴、お主がついていながら…」

そりゃ部屋の中が豆だらけになってたら怒るわな、と鯉伴はぬらりひょんの視線をものともせず思う。

「じぃちゃん…怒ってるの?僕が豆まいたの…」

くんっと下から袖を引かれてぬらりひょんは言葉に詰まる。それを知らず、リクオは悲しそうに言葉を続けた。

「お父さんが豆をまくのは福を呼んで鬼を追い出す為だって。その人が元気でいられる様にって…。だから僕、おじぃちゃんにも…」

「リクオ…」

そう言われてはぬらりひょんも怒るに怒れなくなってしまう。リクオの横で驚いている鯉伴を見れば、鯉伴が仕込んだものでもなさそうだし。

「…そうか。ワシは怒っとらんぞリクオ。それより豆は食うたのか?」

「ううん、まだ」

「そいじゃ向こうでワシと一緒に食うか。行くぞ」

「うんっ!お父さんも一緒に…」

「残念じゃが鯉伴は用が出来てしもぉて一緒には行けんそうじゃ。な?」

「………あぁ。先に行ってろリクオ」

視線だけで鯉伴に片しておけと告げて、ぬらりひょんはリクオの手を引いて行ってしまった。



その後…
リクオが寝付いた後、屋敷内では鯉伴の命令で仲間達が室内にまかれた豆を静かに片付ける姿が見られたとか…。



end




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