おまけ


すぃと差し出された盃を受け取り、唇を湿らせる。…と、その様子を眺めていた鴆が面白そうに笑った。

「お前ンとこにも来たか」

「あぁ。昼が驚いてた」

「だろうな。あれにゃ俺も困った。流石に恋の病だとも言えねぇし、処置しようがねぇぜ」

困ったと言う割りにクツクツと笑い続ける鴆。
盃を傾けた夜はそんな鴆をジトリと見返した。

「お前が示してやらねぇから昼ンとこに来ちまったじゃねぇか」

「そうは言っても俺もその手の話は苦手でな。おめぇらなら得意だろ?」

「得意って…。あのなぁ…」

空けた盃を床に置き、夜は呆れた様子を隠さずにがしがしと頭を掻く。

「いいや、俺の判断は間違っちゃいなかった。現にお前は何とかしてやったんだろう?」

「結果は見てねぇがな。まぁ、元からあの二人はお互いしか見てなかったからなぁ。それが無自覚から自覚したってだけの話だ」

さて、そろそろ帰るかと腰を上げた夜の背に、浮かべた笑みを消すこと無く鴆が声を投げた。

「お前らもな。甘過ぎて俺は砂糖でも吐くかと思ったぐれぇだ」

「ふっ、羨ましいなら女でも作ったらどうだ?昼はやれねぇが、おめぇも中々モテるんだからよ」

「よせやい。柄でもねぇ」

ひらひらと手を振った鴆を振り返り、夜はゆるりと笑う。

「そうか?じゃぁ次に来る時は美味い酒でも持って来てやるよ」

「あぁ、是非そうしてくれ」

くつりと顔を見合わせ、どちらからともなく二人は笑って、夜は鴆の屋敷を後にした。



そして翌朝、相談に乗って貰ったからと律儀に報告をしに来た黒羽丸にリクオは祝福の言葉をかけたのであった。



end



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