夏(昼+河童)

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サンサンと降り注ぐ太陽
すぐ側にはきらきらと光る水面
誰もが飛び込みたいと一度は思うはず―…



□夏□



暑い陽射しを受けて、熱せられた風がリクオの頬を撫でて行く。

「いやいや、それは勘弁して下さい」

リクオの何気なく溢した呟きを拾って、池から顔を出した河童が慌ててブンブンと首を横に振った。

「そう?」

「そうっすよ!池よりもほら、あの人間の作ったぷーる?ですか、あそこへ行ったらいいんじゃないですか?」

「う〜ん。今年は梅雨が思ったより早く開けちゃってさ、まだプールは開いてないんだよね」

少し足を伸ばせば開いてる所もあるだろうけど。

縁側に座るリクオは爪先から草履を滑り落として、少しでも涼もうと足をぷらぷら揺らす。

「だからって池に飛び込まれても困りますよ」

へにょと困った顔をする河童にリクオは苦笑して返した。

「ははは、冗談だよ河童。何か河童を見てたらちょっと涼しそうだなぁって思って」

「それならいいですけど。あー、ビックリした」

リクオ様が池で水遊びなんかしてたら、オイラが怒られちゃいますよ。

ぶくぶくと顔半分を水面に付け、河童は泡を立てる。

「それにしても毎日暑いねー」

ぱたぱたと手で扇ぐ仕草をして、リクオは容赦なく降り注ぐ陽射しを眩しそうに見上げた。



end



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