家族(夜昼+α)


全てを照らす明るい光
全てを包み込む温かな温もり
例えるなら太陽―…



□家族□



自室の障子を開け、廊下に出れば、目の前には青々とした葉をつけた大きな桜の木と、その側に池、手入れの行き届いた庭が広がる。

平日だろうが休日だろうが関係の無い本家の妖怪達は毎日わいわいと祭りのように騒いでいた。

「まったく、よく飽きないなぁ」

つい先ほどそのどんちゃん騒ぎに引き込まれそうになったリクオは廊下に腰を下ろして、はふりと息を吐く。

《ククッ、大変そうだな》

その時、どこからともなく聞こえてきた声にリクオは眉を寄せた。

「そう思うなら変わってよ」

《陽が沈んだらな》

その声の持ち主は何処にもおらず、又その声はリクオにだけ聞こえていた。

頭の中に直接聞こえる声は言わずもがな夜の声だ。陽の出ている間でも、夜が起きていればこうして会話を交わす事は可能だった。

「ねぇ、妖怪ってみんなこうなのかな」

《他はどうだか知らねぇが、うちの奴等は騒ぐのが好きだからな》

今は青々と繁る桜の木と、降り注ぐ太陽光。その眩しさに瞳を細めてリクオは口元を緩める。

「夜もお酒は好きだよね」

《あぁ…。昼、また後でな》

「え?」

唐突に会話を畳まれたリクオは不思議そうな声を出した。

それに被るように軋りと、廊下の床板を踏む音がリクオの耳に届く。

はっ、と振り向いた先には…。

「じーちゃん…?」

「こんな所に居ったのかリクオ。お前もたまにはアイツ等に付き合っちゃれ」

コミニュケーションを取るのも大事じゃぞ、と言いながらぬらりひょんはリクオの隣に腰を下ろした。

「そうかもしれないけど無理だよ。アレに混じったら明日学校に行けなくなっちゃう」

「まぁだ学校とやらに拘っておるのか。そんなもの辞めちまえ、辞めちまえ。そいでワシを隠居させろ」

「だーかーらー、僕は人間なの!おじいちゃんの跡は継げないって言ってるだろ!」

継ぐとすればそれは僕じゃなくて夜の方だ。

ここ最近お馴染みになっている会話を続けていれば、お盆を手にした若菜がやって来る。

「お茶が入りましたよ」

そしてリクオとぬらりひょんの間に膝を付き、お盆から湯飲みを二つ下ろした。

「おぉ、すまないな。若菜さん」

「ありがとう、お母さん」

二人が湯飲みを手に取ったのを見て、若菜はふふっと穏やかに笑う。

「たまにはこうしてのんびりするのも良いですね」

「そうじゃな」

「…うん」

ちゅんちゅんと、仲良く庭に下りてきた二羽の雀を眺めながらリクオもまた笑みを溢した。



end



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