02
じりじりと下から感じる視線に恥ずかしさは増すばかりで、膝にかかる重みさえも意識してしまう。
《昼》
「……っ」
何か言わなくちゃと口を開くものの、言葉にはならなくて。
「…うっ…その…」
言葉に詰まっておろおろとしていれば、頬に触れていた手が離れていき、膝の上で夜がふっと吐息を漏らす。
《困らせるつもりはねぇんだがな…》
苦笑混じりに呟かれた台詞に何だがきゅぅと胸が苦しくなり、あれほど詰まっていた言葉はすんなり口から溢れた。
「ちがっ、その、嬉しいけど恥ずかしくて…」
《恥ずかしい?》
「うん…」
ちょっとだけ視線を膝の上に落として夜に応える。
《ここには俺とお前しかいねぇだろ?》
「…っ、だからっ、夜が見てるから」
《………》
「………?」
何故か急に黙り込んでしまった夜が気になり、恐る恐る夜に視線を落とそうとし…その前にゆっくり起き上がった夜に昼は正面からふわりと抱き締められた。
《…ほんと可愛いな》
「えっ、ちょっ…」
背に回された大きな手が柔らかな栗色の髪に差し込まれ、優しく落ち着くように髪を梳く。
慌てた出した昼の体からは徐々に力が抜け、ほんのり赤みを残した顔で昼は夜の胸元から顔を上げた。
「夜…」
《ん?》
もぞもぞと夜の顔を見る為に腕の中でみじろいだ昼に、背に回された腕の力が緩む。
「いきなり…どうしたの?」
見上げた金の瞳はどこまでも穏やかで、柔らかく表情を崩す。
《可愛いこと言われちゃ抱き締めたくもなるだろ》
「可愛い?」
そんなの言った覚えはないけど。と、昼はきょとんと瞼を瞬かせ、首を傾げた。その仕草に、夜の笑みが深まる。
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