Secret(夜昼)
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ひとつ、ふたつ、またひとつ
近付いた距離の分だけ見える
僕だけが知るキミ―…
□Secret□
この場を満たす穏やかで優しい空気を壊さぬよう、心の中でポツリと呟く。
(…可愛い)
普段の大人びた姿からは見ることのできないあどけない顔。誰かに見せる気はまったく無いけど、皆が見たらきっと驚くこと間違いなしな…。
微かに上下する胸と、静かに聞こえる寝息にくすりと柔らかな笑みが溢れた。
膝の上に流れる銀の髪にそっと指を絡めて、その感触を楽しむ。
(…綺麗な髪)
ありきたりな自分の茶色の髪とは違う、月の光を受けてきらきらと輝く銀髪。
(ちょっとだけ…)
するりと指の隙間から溢れる銀の髪をひと房掬い上げ、唇を押しあてる。
「………」
《……昼》
「…え?…わあっ!夜っ!?い、い、いつから起きてっ!!」
膝の上で仰向けになった夜が、いつの間にか目を開け、金の瞳をゆるりと緩めて見上げてくる。
《お前が俺の髪に触れたあたりから起きてた》
「あっ、ごめん。起こしちゃった?」
《いや…、それより…》
「……ぁっ」
自分の行動を思い返して体温が上昇する。
まともに夜の顔が見えなくなって不自然に視線を庭に移した。
夜の体に掛けてあった青い羽織がパサリと視界の端で落ちる。
熱を持った頬に、すっと下から伸びてきた右手が触れ、ピクリと肩が揺れた。
《もっと触れてもいいんだぜ?》
先程までのあどけない寝顔はどこへやら、露になった金の瞳が愛しげに告げ、寝起き特有の色気に満ちた所作でするりと頬を撫でられた。
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