先輩と後輩エース(堀鹿+笠黄)

※両片想いのバカップル二組
野崎くん:堀(大1)×鹿島(高3)
黒バス:笠松(大1)×黄瀬(高2)
…時と場所を選ばず、のちょっとした続き




その一、敵情視察:鹿島side



大学の構内を堀に案内されながら歩いていた鹿島は、数秒前まで浮かべていたきらきらとした笑顔を顔に固定したまま口元をきゅっと引き締めた。
少し離れた目線の先には堀と、この大学の先輩らしき小柄な女性が堀を呼び止めたまま立ち話をしている。身長差はさほどなく、端から見れば釣り合いがとれたカップルに見えなくもない。…自分と堀が並んで歩いている時とは大違いだ。
だが、それが、どうしたというんだ!
大学が数多の誘惑のある場所で、それは予め、予期していたことだ。

ふぅっと自分を落ち着かせる為小さく息を吐いた鹿島は固まりかけた表情筋を解すと、いつもの軽い調子で明るく会話に割り込んだ。

「堀ちゃん先輩、そちらの可愛いお姫様は誰ですか?なんだかんだいって堀ちゃん先輩も隅に置けないですね!」

割り込んだ鹿島に堀が呆れた顔で振り向く。
お姫様は鹿島を見て驚いた後、鹿島渾身の王子様スマイルに、ほわりと薄く桃色に頬を染めた。

「この人は演劇部の先輩だ。先輩、コイツが鹿島です」

「あっ、あなたが噂の鹿島くん!堀くんが良く絶賛してる後輩の!」

「絶賛……、こほん。初めましてお姫様。堀先輩の後輩の鹿島 遊です。今日はお会いできて嬉しいです」

先輩がなんと言っているのか気になりはしたが、今はこちらが最優先だと頭を切り替え、恭しくお姫様の手を取り、手の甲に唇を落とした。

「きぁっ!ほんと、王子様みたい!」

お姫様は王子様な鹿島に黄色い声を上げ、ぽぅっと鹿島を見つめる。それに鹿島も微笑み返し、そっと手を離した。

「ありがとうございます。これでも堀先輩に鍛えられてますから」

「おい、鹿島。お前やり過ぎ」

「ねぇ堀くん!確か鹿島くん高校三年生だって言ってたわよね?来年この大学に入ってくれないかな?」

前半は堀に、後半は鹿島に向けて言葉が投げられる。堀は鹿島に視線を流して、鹿島はお姫様の言葉ににっこりと笑って答えた。

「お姫様が待っていてくれるなら、考えようかな?」

「鹿島!先輩も、コイツの戯言に乗らないで下さい」

「え〜っ、いいじゃない。ケチ!」

「ケチでも何でも良いですけど先輩、授業はいいんですか?」

堀にせっつかれ、お姫様はいけない!と慌てて鹿島達に背を向ける。去り際、鹿島に「考えておいてね」と一言残してお姫様は去って行った。

とりあえず鹿島の目論み通り、堀から鹿島に意識が移ったようなので、鹿島はひらひらと手を振りながら心の中で密かにガッツポーズをした。

堀ちゃん先輩は私が守る!



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