「ひみつって…。」
「そんなこと言われたら余計気になるよなー。」
「気にしなくていいよ、本当面白くもないことだから。」
ちょっとだけ見せて。やだ。
そんな会話をしつつも互いにパソコンと向き合い手を動かす。
と、いきなり入口が勢いよく開いた。
「バイトしない!?」
その勢いのまま叫ぶように言ったのは、久遠寺高校3年篠原夏希先輩。
顔良し、成績良し、剣道も出来る…とあって、校内のアイドル的存在である。
そんな先輩の突然の登場に、三人ともパソコンから顔を上げ目を丸くした。
「夏希先輩――!?」
「どうしたんですか、そんなに慌てて。」
「あ、椿も居た!丁度よかった!」
「は?え、だからどういう…。」
問いかけにも答えてもらえず、椿は苦笑いした。
――相変わらず、話を聞かない人だ。
「バイトしてくれる人を探してるんですか?ちなみに、二人はもう既にバイト中ですけど。」
「バイト?」
「OZの保守点検ですよ。椿が紹介してくれたんです。」
「へ?すごーい!」
「いやいや、末端の末端だからチョロイっす。な、健二?」
学校のアイドルと話せる機会とあって、これ幸いとばかりに佐久間が話しかける。
その横でパソコンと真っ赤な顔でにらめっこを続ける健二にも話を振った。
健二が夏希先輩に惚れていると知っての行動である。
当の本人は、先輩に目を向けることもなく、照れたように短く返事をするだけであった。
その様子を、椿は微笑ましげに眺めていた。
「でも、そっかー。他のバイト中かぁ…。」
あー、次はどこをあたろう…と嘆きながら出て行こうとする夏希に佐久間はバイトの内容を尋ねる。
その言葉に、夏希はチラリと椿を見て答える。
「んー…バイトって言っても、私と椿と、旅行してくれるだけでいいんだけど――…。」
「へ?それって…。」
不意に呼ばれた自分の名の意味を問いかけようとした声は、ガタンッという椅子の揺れる音にかき消された。
「はいっ、オレ!オレやります!!」
「えっ?!じゃあ、ぼくも…。」
その言葉に夏希は笑顔になる。
その後ろでは今しているバイトはどうするのか、と佐久間と健二が口論していた。
「本当っ?!けど、二人じゃちょっと多いかな。」
「「え?」」
「募集人員、1名なの。」
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