01
 




仮想世界OZ‐オズ‐。
世界中の人々が集うインターネットサービス。
ショッピングやゲームだけでなく、
現実の納税や、果ては行政手続きまで出来てしまう仮想世界。
OZ内のアカウントは本人と同じ権限をもっていると言っても過言ではない。
そんなOZに集められた個人情報は、世界一優秀と謳われるセキュリティによって守られているのだ。





「あと少しで日本代表になれたんだ…。」
「まだしょんぼりしてんの?いい加減…。」





そんな仮想世界を自由奔放に飛び回る影、一つ。
くりっとした大きな紅い瞳。
整ったパーツ。
その顔から伸びる、ピン、と伸びた黄金色の三角耳。
スラリと白く、細い四肢。
それを包む朱色の着物。
ゆらゆらと揺れる狐の尻尾。





「あと少しでさぁ…。」
「それ聞き飽きた。いい加減新しいことに目を向けようぜ。」





そんな影を見た周囲はざわめき出す。





《ツバキだ!》
《すげぇ!本物のツバキ嬢だ!》 
《キングが一緒じゃないとか珍しくね?!》





「え、ツバキ嬢が居んの?!どこ、どこ!?」
「ツバキ嬢って…あの、キング・カズマのパートナーの?」
「あー、駄目だ。もうどっか行っちゃった。」





がっくり…と肩を落とすのは、久遠寺高校2年の佐久間敬。
そんな彼を、その横に座る小磯健二は苦笑いして見ている。
時は、夏休み。
久遠寺高校物理部部室。
そこに二人は居た。
――否、【三人】は、居た。





「もー、口動かす前に手を動かしなよバイトくん。」
「椿も手伝えよー。」
「やだよ。僕はバイト引き受けてないもーん。」
「椿もさっきからずっとパソコン触ってるよね。何やってるの?」
「ん?」





二人の後ろで壁に寄りかかってパソコンを弄る少女を振り返り、健二が問う。
その問いかけに少女はようやく顔を上げ、右手の人差し指を口元に寄せて笑った。





「…ひみつ。」







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bkm
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