ふわり桜はに染まる
CHANGE
.呼応



行きはよいよい

帰りは怖い



さあ、黄泉の世界に参ろうか。





「おねえちゃん。」

『…?ねぇみんな。今、声しなかった?』

「は?そんなもんしたか?」



それは珍しく五年生六人全員での任務の帰り。
時は丑三つ時。場所は裏裏山。
その日は、朝から雨が降っていた。
匂いや音を消すことの出来る、忍としては絶好の日。
任務も滞りなく済み、後はこの山を越えて学園に帰るのみとなった。
そんな中、聞きなれない声が耳元でしてふと立ち止まる。
聞きなれない…いや、いつか遠い昔に聞いたことがあるような…。



そう、女の子の声。



「幽霊だったりしてー。」



ケラケラと笑いながら尾浜勘右衛門は言う。
それに対して「やめろよ、寄ってくるだろー?」と竹谷八左ヱ門が同じく笑いながら返した。
皆も笑っている。まさか、霊なんて、そんなもの。



「気のせいじゃないか?」

「うん、きっと疲れてるんだよ。」



仲間達が笑って私を見る。
そんな皆に曖昧な笑みを返して、少し後ろを振り返る。
ただ、暗い道が続いていた。



『(やっぱり…誰も居ない。)』

「ほら、早く帰ろう。」



いつまでも振り返って立ち止まっている私を見かねて久々知兵助が手を引いた。
それに小さく返事をして少し先を歩く皆を追いかける。
それでも少し気になって、またチラリと後ろを見た。
視界の隅で、動く。



『紅い、蝶…?』



紅く透き通る、雨には不釣合いな、紅い蝶々
暗闇の中にやけに浮いてはっきりと見えた。



「おねえちゃん。」



呼ばれてる。



「…深琴?」

「おねえちゃん。」



誰かが呼んでる。
違う、違う、違う。あの子じゃない。
そんな訳、あるはずがない。

「おねえちゃん。」



あの子、なの?



「ちょっと待てよ、深琴!!」

「どうしたの、兵助!」

「深琴がどこかに行こうとしてるんだ!さっきから呼んでも反応が無くて…!!」

「深琴!おい、しっかりしろ!!」



呼ばれてる。あの蝶が、私を呼んでる。
あの子 が  を 。



『…ごめん。私、行かなきゃ…。』

「は?!ちょ、深琴!行くってどこに…!!」

「おい!ふざけんなよ!!」

『―――呼んでるの。』



あの蝶が。あの子が。
皆に背を向けて一気に駆け出す。
蝶は誘導するようにユラユラと山の奥へと進んでいく。
どこに行くのか分からない。
だけど、もし、もしもあの子にもう一度会えるのなら。



「おねえちゃん、私はここよ。」


誰かがクスリ、と笑った気がした
(ッくそ!なんでどこにも居ないんだ?!)
(そんなに離れてない筈なのに…。)
(…なぁ、みんな。)
(今度は何だよ、兵助!!)
(帰り道…なくなってる。)
((((はぁ?!))))


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