アイツが、椿が、目を覚まさない。
もう三日も前のことだ。
自室で予習をしていたら、ドタバタと凄い音をさせ、泣きながら三郎次が部屋に飛び込んできた。
「久々知先輩!!」
「どうした?三郎次。」
「椿先輩がっ…椿先輩が…!」
「!椿に何かされたのか?!」
「椿先輩が目を覚まさないんです…!ぼくっ、僕らのせいでっ…!!」
いまいち話が見えないからなんとか宥めて聞くと、アイツは三郎次達を庇って毒を吸い、倒れたらしい。
「いい気味じゃないか。このまま目覚めなければいい。」
私の言葉に三郎次は弾かれたように顔を上げた。
その顔は憎悪に満ち溢れていた。
「っなんでそんなこと言えるんですか?!先輩は椿先輩が優莉さんを襲ったと思ってるんですか!!」
「つい昨日まで三郎次だってそう言ってたじゃないか。」
「ッもういいです!尾浜先輩の所に行きますから!!」
三郎次が部屋から出て行った。
部屋が急にシン…と静かになる。
椿は、このまま死ぬのか。
まだ優莉に謝らせていないのに。
まだ優莉の分も仕返していないのに。
まだ、まだ。
おかしいな。
何故だか涙が止まらないんだ。
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