そのまま天井裏を駆け、五年い組の教室の上まで来た。
板を外して降りようとした私は、不意に聞こえてきた声に固まる。
すごく、聞き慣れたものだったからだ。
「なぁ、勘右衛門。」
「…何、兵助。」
「椿のこと、どう思う?」
不意に自分の名前が出て、戸惑う。
これは降りるに降りられない。
あたふたとしている間にも話はどんどん進んでいく。
「椿は…。」
「俺、椿があんなことするような奴だと思わなかった。」
ぽつり、と呟かれた兵助の言葉にフッと一瞬息が止まる。
ドクドクと心臓が煩い。
何だよ、分かってたはずじゃないか。
私に友達なんて、もう居ないことくらい分かってたじゃないか。
「…俺は、椿はやってないと思う。」
勘右衛門が俯きながら小さく、だけどハッキリと言った。
その言葉に涙が出そうになる。
嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて。
安心して、息を吐く。
が、次に兵助が発した言葉を聞いて、私は再び息が止まった。
「…やっぱりお前は分かってくれないんだね、尾浜。」
なんで…?
何で、何でそんなに苦々しく尾浜、なんて呼ぶんだよ。
いつもみたいに勘右衛門って呼べよ。
そんなに苦しいんなら、尾浜なんて呼ぶなよ。
なんで…なんで、勘右衛門が何、か…。
(私のせいだ。)
今の会話を聞いていたら誰だってすぐ分かる。
勘右衛門は私を庇うせいで、兵助たちから仲間外れにされてるんだ。
私を、庇うせいで。
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