『…まぁ若干予想はしてたがな。』

「あはは…。」





優莉が来てから早半月。
だというのに彼女に対する男達の態度は依然改善されず。
飯時には食堂でワイワイと騒ぎ立て、彼女を見かければすぐにでも飛んで行き離れない。
たまに話せば口から出るのは彼女のことばかりで、どこから出てくるのか分からないくらいの賛美を並べ立てる。
…お前ら何だか滝夜叉丸みたいだ。
(試しに一回そう兵助に言ったら、全力で黙られた。)





「せんぱーい。」





あれから、コイツもよく来る様になった。
どうやら同級の友達も優莉に夢中で煩わしいんだと。
(同級の友達…ということは平滝夜叉丸と田村三木ヱ門、斉藤タカ丸…か?)
口を開けば優莉の話、正直うんざりだというところだろう。
私も正直そう思う。





「滝夜叉丸が…。」

『ん?滝と喧嘩でもしたか。』

「いえ、煩かったからターコちゃんに落としてきたんですけど。」

『お前なぁ…。』

「あはは…。」





綾部の言葉に勘右衛門と二人、苦笑いを零す。
まぁ助けに行かなくとも滝なら出れるか。
そう思い直し、茶を啜る。
そう、私達は今、食堂に居ます。





「でも先輩達も律儀ですね。頼まれてもないのにおばちゃんの手伝いするなんて。」

『まぁ私達は午後から暇だからな。』

「部屋も居心地悪いからね。」





…そう、この半月で私達と皆との間にはとてつもなく高い壁が出来上がってしまった。
それは勿論私達が不用意に近付かないようにしていた為でもあるが、皆も優莉以外には興味を示さなくなってしまったようだ。
勉学も疎かになって成績も落ちる、委員会活動もされない。
…あぁ、また溜め息出そう。





「でも先輩達も薄情ですね、あんなに仲良かったのに。」





そう、私達六人は仲の良いことで有名だった。
何をするにも一緒に居て、でもそれも全然苦にならなかった。
それが今では一緒に居ることさえ苦痛に感じる。
一日に一言も言葉を交わさないことも稀ではない。





『…まぁ、所詮そんなもんだろう。』





所詮人の絆なんてそんな脆いものだ。
そう言って涙目になる勘右衛門を横目に見つつ、また一つ、茶を啜った。





(これも一つの世の真理。)



 


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