レンズ越しの笑顔 1




「あ、倉本くん、醤油入れてー」

「はい、投入ー」

「ありがとう」


いつもと変わらない朝。

倉本くんと一緒に、キッチンに立つ。

仕事に行く前に、二人で起きて、二人で料理するのは、いつものこと。


「よし、できた」

「あ、篠田さん、これ運ぶよー?」

「うん、よろしくー」


テーブルまで料理を運んで、向かい合って座って。


「いただきまーす!!」

「いただきます」


一緒に手を合わせた。

かぼちゃの甘煮を食べながら


「おいしっ」


と笑うと、倉本くんもふわっと笑った。


「今日は雑誌の撮影だっけ?」

「うん。車の雑誌」

「そっかー」


倉本くんは、毎日毎日、カメラの仕事で楽しそうだ。

あたしは、近くの高校で、古典を教える毎日で。

そんな平凡な生活だけど、毎日が幸せだ。




それにしても。



「朝からこんなにたくさん和食が並ぶ新婚の食卓って、そうそう無いよね」


ほうれん草のおひたしを食べながら、サンマを見つめて言う。


「ははっ、うん。おじいちゃんおばあちゃんの食卓みたいだね」

「うわー、老人夫婦の食卓……!!」


そう言って、また笑う。

こういうとき、やっぱり好きだなーって思う。


「あ、そうだ。ちひろの結婚式の招待状きたけど、倉本くんも行くよね?」

「うん、もちろん」


分かった、と頷いて、きんぴらごぼうに箸をつける。


「あ、お味噌汁おいしいよ」

「ほんと?」

「うん。やっぱり、さつまいも入れたのは正解だったねー」

「きんぴらもおいしいよー」

「良かった良かったー」



食べ終わって、先に食器を洗っていると、後から食べ終わった倉本くんが隣に並んで。


「スポンジとってー」

「んー」


洗剤も一緒に渡すと、嬉しそうに笑う。


正直、二人で流しの前に立つのは狭い。

でも、なんか、隣に倉本くんがいるだけで、面倒くさい洗い物も楽しくなるから不思議だ。


居心地がよくて、のんびりしてたら、もう倉本くんは洗い終わってしまってて、タオルで手を拭きながら、あたしを見てた。

それに気づき、食器を洗う手を速めて、終わらせた。


それから二人で歯磨きをする。

しゃこしゃこと手を動かしながら、鏡越しに倉本くんを見ると、目が合って。

それだけで嬉しくて、思わず笑みが漏れる。


口をゆすいで


「あたし、メイクしてくるね」


と告げて、パパッとメイクして。

終わった後、急いで玄関まで行くと、倉本くんが首から一眼レフを下げて、何やらたくさん荷物を持って、待っていてくれた。


「ありがとう」

「いえいえー」


パンプスを履いて、全身をチェックして。


「ん、行こー」


かばんを肩にかけて、そう言うと


「エリカ」


隣に立っていた倉本くんが口を開いた。

ん?と顔を上げると、じーっと覗き込んできて。

目を閉じれば、ちゅ、と触れるだけのキスをされた。


目をゆっくり開けたら、笑顔の倉本くんがいて。



「エリカ、好きだよ」

「あたしのが、きっと直樹のこと好きだよ」


「あははっ」

「ふはっ」


笑い合って、家のドアを開ける。


「じゃあ、行ってきます、篠田さん!!」

「行ってきます、倉本くん!!」



さあ、今日も一日、頑張ろう。




―fin―
「倉本先生、何かいいことあったんですか?」
「ふは、毎日が幸せですよー」
「いいですねー、新婚」
「いいですよー、新婚」



 * 20100926

【レンズ越しの笑顔】の二人の結婚後の話です。
この二人は書いてて楽しいです。
もう結婚してるので、篠田さんは名字変わってるんですが。
甘モードのときだけ、名前ってことで。笑
夜ならともかく、朝って、なかなか時間ないから、二人でご飯作ったり普通はしないじゃないですか。
でも、そんな忙しいときでも、二人の時間を優先するっていうのは、憧れです。
自分が将来、こうなりたいなーっていう願望も詰めてみました。←




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