06.a poco più lento


テスト週間に入り、全ての部活は大会でもない限り活動は中断される。吹奏楽部の活動もテストが終わるまで約2週間の休みに入っていた。それでも2週間まるまる吹かない、と言う訳には行かないのでほとんどの生徒が楽器を持って帰って自主練習をしている。
あたしも勉強の息抜きに、ほとんど毎日楽器を吹いていた。
テストも近くなり無理やりいろいろ詰め込まれる頭はパンクしそうだ。そういえばこの間エレンが、テストなんて駆逐してやる…!って怖い顔で言ってたな、なんて考えているうちに今日の授業は終わっていた。エルヴィン先生に会いたい。楽器吹きたい…。


「だあぁぁあああ!エルヴィン先生が足りない!そんでもって楽器が恋しいなあー!」

チラリ、とあたしはわざとらしく同じクラスで隣に座るアニを横目で見た。あれ、ガン無視ですか、おねえさん。

「…アニ、練習しない…?」
「そう言って昨日も練習誘ってきたじゃない、ナマエ。」
「う…だってアニとあたしの家近いし…ひとりで吹いてたら誰かと練習したくなるし…」

テスト週間の間は、なかなか吹奏楽部の仲間と一緒に過ごす時間はない。寂しい。昨日はアニと一緒に近くの河原で練習した。そういうのはライナーかベルトルトに言って頂戴、とアニは言った。アニは成績が良いから昨日も勉強の邪魔をしてしまったのかな、と少し落ち込んだ。彼女と一緒に階段を降り、帰るために下駄箱へ向かう。

「ごめんね、アニ…」
「まあ、この土日ならテスト週間挟んでるから休みだし、時間取ってあげてもいいけど。」
「…アニってなんだかんだ優しいよね。」
「嫌なら別にいいよ」
「うそ!練習しよ!」
「相変わらず素直じゃないな、アニ。」
「あ、ライナー!ベルトルト!一緒に帰ろ!」
「うん、ナマエ。一緒に帰ろうか。」
「ちょっ、痛ェ!痛いから!!アニ!!」

下駄箱で偶々出会ったベルトルトはにこりと笑い、ライナーはアニに脛を蹴り上げられていた。
アニとライナーとベルトルトは同じ中学校の出身で、あたしは別の中学校出身だけど帰り道が一緒だ。部活終わりもたいてい一緒に帰っている。

「ねえねえ、今度の土日、アニと一緒に練習しよ?」
「ああ、いいぜ。」
「僕も、いいよ。」
「やった!じゃあまた時間とかはメールするね!」
「でも、ナマエは勉強大丈夫なのか?」

ライナーがからかうようにニヤニヤしながら言ってきた。あたしはその言葉に口をとがらせる。これでも部長としての威厳を保つため、一応勉強してるんだぞ。一応だけど。

「うるさい。あたしに英語の点数勝った事ないくせに」
「あはは、ナマエは英語の成績だけいいからね。」
「ベルトルトさんヒドイ!!」
「じゃあ得意教科の点数で賭けしようぜ。」
「おうよ!ばっちこい!」

私は遠慮しておくよ、僕も、とアニとベルトルトは早速拒否した。2人とも成績良いのに。というかこの中で一番成績が低いのはあたしだ。
なに賭ける?学食三日分だ、とか今回の数学の範囲が鬼畜過ぎるとか、部活とは関係ない話をして帰るのも楽しい。こんな友達がいるのはとても幸せな事だ。一緒にいてくれる事を感謝しなきゃなって思う。

「ねえねえ、アイス屋さん寄ろ?ソフトクリーム食べたい!」
「ナマエ、家帰って勉強したくないんでしょ。」
「う、違うよ…アニ。3人と一緒にいたいだけだもん。」

そう言うとアニはあたしの足を軽く蹴った。なんだかんだアイス屋さんの方向に向かってくれるんだからやっぱり彼女は優しい。

ライナーはしょうがねえなあ、とか言って、ベルトルトは優しく、部活帰りは行けないもんね、と言ってくれる。この2人もいつもあたしの我儘を聞いてくれる。

「わーい!ライナーのおごり!」
「なんでだよ!!」

偶には部活がない日も良いなって思うけど、やっぱり早く他のみんなにも会いたい。
勉強がんばればすぐにテストなんて終わるよね。

めずらしくやる気が出たし、ライナーにとか余裕で勝てるっしょ!



と、思ってたんだ。



「いやあ、わざわざすまんな!ナマエ!」
「くっ…この借りはいつか必ず返す…!!」

テスト週間が終わり、テストも全て返ってきたその日、得意の英語でコケたあたしは泣く泣くライナーに学食を奢らされていた。



a poco più lento / 少しまったりと
(部活だけじゃなくて勉強も大事ですよ)

back
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -