10.disperato


先生、あたしはあなたをとても尊敬しています。
先生、あたしはあなたにとても感謝しています。
先生、大好きです。
あたしはあなたの造り出す音楽の中にいる事が堪らなく幸せなんです。

3年前の夏、先生と出会わなければあたしはもう2度と楽器になんて触らなかった。音楽の楽しさにも、大好きな仲間にも出会う事無く、つまらない生活を送るはずだった。



3年前、あたしは人数だけは多い弱小中学校の吹奏楽部で部長をしていた。ただ、今みたいにみんなに支えられながらも部長に選ばれたんじゃなくて、あたししか、吹奏楽に対してやる気がなかったからだ。顧問の先生ですらも、あまり中学生の指導に感心がないようだった。

最後のコンクールはホルンパートがかなり目立つ曲だった。あたしだけが吹くソロもあったし、どんなにあたしが練習しても、がんばってパートの練習を見ても、部員にがんばろうって声を掛けても、結局何も変えられなくて、念願の金賞に手は届かなかった。

表彰はあたしと副部長の子でステージに上がっていたけれど、結果はなんとなくわかっていたのに賞状を貰いに前にでた瞬間には涙が止まらなかった。金賞がとれなかった事よりも好きな事をがんばっても意味がなかったという事がたまらなく悲しかったからだ。悔しいというよりも情けなくて、好きだというだけで続けてきた楽器も、吹奏楽も、もう辞めようとその時心に誓ったんだ。



「くそくらえ。」



会場を出て、近くの河川敷であたしは書き込みで真っ黒になった楽譜をビリビリに破いて捨てた。



disperato / 絶望的な
(世界は真っ暗だ)

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