07.burlesco


その日、音楽室には吹奏楽部の3年生が集まり、今までにない緊張した空気が張りつめていた。

「今回の新入生オリエンテーション、我々の命運を左右する。この選曲で異論はないかね、ブラウンくん。」
「ああ、ただ…」
「ただ…なんだね?」
「本当にアレをするなら、ふざけすぎてやしないか…?」
「大丈夫だ、問題ない。このオリエンテーションの件、エルヴィン指揮官は私達に委任し、関与しないと聞いている。」


「まあ、おもしろそうでいいんじゃねえか?」
「ジャン理解があるジャン!」
「なんかうぜえ!!」
「てなわけで、」


春、新入生オリエンテーションで吹奏楽部であるナマエ達は部活アピールのために演奏することになっている。顧問であるエルヴィンは1年生の担任なるため忙しく、この件の練習や演出などは3年生に一任された。つまりはあたし達もちょっとはふざけていいという事なのだろうと部長であるあたしが勝手に解釈したのだ。

…しかし、先生には協力して頂きますよ…。

「曲名は『ラプソディインブルー』で決定でよろしいでしょうか!」

この曲はいくらか前にマンガとかドラマで流行ったし、吹奏楽を知らない子も聞いた事ぐらいはあるだろう。これで去年よりも多い新入部員をゲットだぜ!

「曲には鍵盤ハーモニカを使います。」
「おお!テンションあがるぜ!」
「そうだね、エレン。」

そしてサシャとあたしとコニーはフフフ…とほくそ笑む。

「先生にマングース着せましょう!!」
「先生ピアノもできるよね!!鍵盤ハーモニカは先生のソロです!」
「指揮振りながら、やってもらおうぜ!着ぐるみ着て!ぎゃははは!想像したらウケる!」
「そんなの良いって言ってもらえんのかよ!!」
「よくぞ聞いてくれました。ジャンくん。サシャ!」

パチン、とあたしは指を鳴らす。

「エルヴィン先生には許可取得済みです!」

マングースの件は当日まで秘密ですが、とサシャは付け加えた。
ライナーがふざけすぎてやしないか、と言ったのはこの作戦をあらかじめ伝えていたからだった。
ジャンは顔を引きつらせながらとりあえずやってやろうじゃねえか、と呟く。

「考えたんだがこの作戦を考えた部長にも責任ってもんがあるよな。」
「え、何ライナーくん」
「ナマエ、お前も鍵盤ハーモニカやれ。1本じゃ俺らの音に埋もれるからな」
「まあ、確かにそうだな。バランスが悪い。」
「えっ、ちょ、ライナーくん?ジャンくん?」

そうしてあたしも無理やりな話の流れで鍵盤ハーモニカを吹く事になった。ピアノは習っていたけど、今では専門外だ。うまく指が回らなくて何度か発狂した。あれだけ指の回る木管の人って本当にすごいんだなあと涙ながらに感心した。そして苦戦しながらも特訓し、エルヴィン先生と一緒に練習できた事が幸せこの上なかったのは秘密だ。
それと先生に鍵盤ハーモニカが似合わなさすぎて噴きそうになった事も秘密だ。

まあ良い。あたしの真の目的はエルヴィン先生マングース化計画である。



マングースの制作はサシャとコニーによって秘密裏に行われていた。



burlesco / いたずらっぽく
(作戦開始!!)

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