足跡の平行線

※現パロ


コツコツと2人分の足音が冷えた空気に響く。それはどこか足早で。寒さが長く続くこの季節、歩く度に顔に当たる風が冷たい。繋いだ手すらも温まる気はしなかった。

「寒…」
「マフラーはどうしたんだい?」
「今日、朝あんまり寒くないなと思ってつけてこなかった」
「夜は冷えるって、予報で言ってたぞ」
「えー、うそお。知らなかった…」

うはー、手カサカサだあ、と水気と熱を与える為に繋いだ手を離して両手に息を吹きかける。おもむろにエルヴィンが首からマフラーを取って私の首に巻きつけた。道に誰も居ない事をいい事に軽く抱き締めて私の背を撫でた。

「ほら、これ巻いて」
「え、いいよ。帰るまで我慢できる」
「風邪ひかれたら困るから」
「エルヴィンだって同じじゃん」
「そんなに柔じゃないから大丈夫だ。手洗いうがいだってばっちり」
「ふふ、じゃあお言葉に甘えて…ありがと。エルヴィンの匂いがするー」
「ほら、手も」

おいで、と言われたので思わずにっこり笑って彼が着ている黒いロングコートのポケットに手を突っ込んだ。すると、エルヴィンの手も後を追って入ってくる。手袋をしていない2人の手がポケットの中で絡まった。

「温かいね」
「温かいな」
「はやく帰ろ?」
「ああ」
「…今日、シチューが食べたいなあ」
「俺も」

2人なら1人で帰るよりも寒くないね、と暗闇に白い息を吐き出した。

20131124~1224

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テーマ「人外ファンタジー」
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