ブラインドラブ

「あ、ガスの補給するの忘れてた」
「さっきナマエの分も僕のと一緒に補給しといたよ」

「シャフトの交換するの忘れてた」
「それもしといたよ」
「…あ、りがと」

「わ、スプーン落としちゃった」
「はい、これ使って」
「…え、これベルトルトが使ってたやつ…」
「使いたくない?」
「い、いえ、使います…」
「良かった。ナマエの為ならなんでもするよ」

「ライナー、次の訓練行こう」
「僕じゃ駄目なの?ナマエ」
「いや、ライナーが偶々そこに居たから誘ったの。駄目なんかじゃないよ?」
「良かった…ナマエ、すき。ナマエは?」
「……あたしも、です…」

ベルトルトはとにかくあたしの面倒を見たがるし一緒に居たがる。ここ最近それも度が過ぎている気がするくらいだ。あたしもベルトルトが好きだし、とても嬉しい事なのだけど、こう、皆の前で堂々と好きだとか言われると恥ずかしくて死にたくなる。今だって、横にいるライナーは苦笑いしてるし。これが2人きりになるともっとエスカレートするのだからこっちの心臓は持ちそうにもない。


今日も死ぬかと思うような訓練が終わった。訓練場から重たい足を引きずって宿舎に戻ろうとするとベルトルトに手を引かれた。

「何、どうしたの?」
「ナマエ、怪我してる」
「え?ああ、これ?大した事ないから大丈夫だよ」

手首の傷は、対人格闘訓練の時にできた擦り傷で大きいものでもなかったし、ベルトルトに言われるまで自分でも忘れていた。


彼が心配そうにするから笑って取り繕うと、掴まれた手はベルトルトの口元まで持ち上げられる。彼の口から覗いた赤いそれはあたしが抵抗する間もなく、手首の傷を舐めた。思わずぞわりと全身が粟立って、目を見開いてしまった。


「ちょっ、ちょ、ちょっと!ベルトルト!?」
「ん?」
「ん?じゃないよ!みんな見てるからね!?」
「じゃあちょっと離れよう、傷も洗わなきゃ」

周りも、多分あたしと同じような顔をしてあたし達を眺めていたと思う。ベルトルトに手を引かれて、その場から離れた。


ベルトルトは、水で傷を洗い流してくれた。だけど、そこまでは全部無言で。雰囲気に呑まれてしまって、怖気づいてしまう。怒ってるのだろうか。

「…大丈夫?」
「え?あ、うん。全然痛くないよ?」
「良かった…気をつけてね?」
「これくらいの怪我毎日してるのに、どうしたの…?」
「だって、心配なんだよ…ナマエが怪我するのは嫌だ」
「大丈夫だよ…心配しすぎ、ベルトルト」

1人悲しそうな顔をするベルトルトの上着の裾を掴む。ベルトルトが悲しそうな顔をしたら、あたしも悲しくなる。そっと手を繋ぐと、大きな手があたしの手を包み込んだ。

「すきだよ、ナマエ」
「う、うん?あたしもだよ?」

いや、そういう雰囲気だとは思ったけど、なんで疑問形になったのかというと、ベルトルトが突然笑顔になったからだ。ぐいっと手を引っ張って引き寄せられる。

「だからキスしてもいい?」
「は、はい?なんで急に元気になったの?」
「ナマエが可愛かったから」
「何それ…」

全く意味がわからない。だけどベルトルトとあたしの唇の距離はもうすぐゼロになってしまう。

ギュッと目を瞑ると、一瞬だけ唇が重なった。

「可愛いね、ナマエ」
「…っ何回も言わなくて良いよ!」

ベルトルトが笑う顔は好きだ。でもいい加減恥ずかしいからやめて欲しい。不意打ちに、もう一度キスされると、そろそろ戻ろうか、と彼は言った。

「あとナマエ、シャツのボタン取れかけてるからあとで縫ってあげるね」
「えー?嘘。わ、ほんとだ。縫ってくれるの?ありがとベルトルト!」
「可愛い可愛い」

ベルトルトは満足そうにあたしの頭を撫でて微笑んだ。あたしはそれを少しだけ嫌がるのだけれど、なんだかんだであたしもその愛され具合に慣れてきてしまっているのだった。

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -