甦生

※転生。大学生と大学生ライナー


ぼーっと、喫茶店のカウンターに座って外を眺める。ケータイをいじる。また外を眺める。何度かそれを繰り返すと待っていた人の声が聞こえた。

「悪い、ナマエ。遅くなった。」
「遅いよ、ライナー。授業長引いた?」
「ああ。あの先生授業のチャイム鳴ってんの気づかねえでずっと話してた。」
「はは、お疲れー。何か買っておいで」
「おう。」

ライナーは荷物を置いて、財布だけを持ってレジに向かって行った。

お互いバイトが無い日、授業が終わったらこの喫茶店で会って、それからご飯を食べて、どちらかの部屋に行く。これがあたし達の習慣になったのも、もうだいぶ前の事だ。ライナーはすぐに戻ってきて、さっきの授業の件を話す。たわいも無い話をこうやって飽きる事なく続けられるのは、一緒にいる事が当たり前を通り越した何かなんだからだと思う。それが何かはよくわからないけど、もうずっと前からそうなのだ。

陽が落ちてきて、辺りをオレンジ色に染める。あたしがさっきまでそうしていたように、2人で何も話さず窓の外を眺める。すると、ライナーはあたしの左手首についている、彼がくれたブレスレットを撫でた。


「こんな風に過ごせるなんて思いもしなかったよな」

ライナーは、時々噛みしめるようにこの言葉を口にする。


そういえば、前に生きていた時も彼はブレスレットをくれたなあなんて思い出した。あたし達はとんでもない世界を生きていた。そして生まれ変わってもその記憶を持ったまま、また出会って、一緒に居る。本当に有り得ない。有り得ないけど、それはもはや前に生きていた頃から決まっていた事なのかもしれないと思う。人の人生は本当は最初から決まっているとか、そういう話みたいに。

「そうだねー」
「今晩は何食べようかとか、明日は何しようかとか、考えた事なんてほとんど無かったもんな。というか巨人って何だよって思ってしまう」
「本当に今では巨人って何だよって感じだよね、有り得ない。でも今晩はお肉が食べたいなとかは思ってたよ」
「確かに」

小さく声を出してライナーは笑った。ブレスレットをいじっていたライナーの手を掴んで握る。

「…大丈夫だよ、今度は幸せに生きられるんだから。ライナーが他の女の人のとこに行かない限り。」
「ああ、そうだな。」

あっさりと肯定されてなんとなくむかついたので、無理なくせに、と呟くとライナーはまた笑った。

「ナマエだって他の奴のとこに行くのなんて無理だろ?」
「…さあ、どうでしょうね。前と違ってこの世界には恋愛で忙しい子がたくさん居るよ。…あ、こないだナンパされた人からメールだ」
「え…おい、嘘だろ…」
「この人まぁまぁかっこよかったんだよねー、ライナーと違ってすらっとして。」
「……」

段々とライナーの顔が強張っていく。ライナーのなんとも言えない表情を見て、つい噴き出してしまった。

「…ぶはっ、う、嘘だよ、ライナー!ナンパなんかされた事ないし!ははは!」
「べ、別に信じてなかったし!」
「ごめんね、ライナー!」

不覚にもこんな大男に対してかわいいと思ってしまった。今に生きてるからこそ言える冗談だな、なんて思う。
まだ少し笑いをひきずっているとライナーはあたしの手を強く握った。

「ナマエ」
「いっ、痛いよ…ごめんって」
「もう離さないからな」
「……もう離す必要なんてないよ、ライナー」

さっきまで笑っていたのに次は泣きそうになった。次は幸せを求めて生きていけば良い。


「幸せになろうね」
「ああ、」



それは、知らない人が聞けばまだ若いあたし達には、安い言葉かもしれないけれど。

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