ランドスケープアゲート

「だーれー?」

イヤ、お前が誰だ、と、リヴァイは、フローリングに座っている生き物を見下げた。

「あ、リヴァイさん、おはようございます!」
「…ナマエ、こいつはなんだ。」
「あー、すいません。エルヴィンさんの知り合いの子を一日預かることになっちゃって。リヴァイも今日休みだから大丈夫だろうってエルヴィンさんが言うから断れなくて…」

濃茶の髪と大きく開けられた目を持つこの子供は4、5歳くらいだろうか。このくらいの子供ってかわいいですよねー、と言って、勝手に預かってきたことを差して詫びるでもなくナマエは朝食の準備に戻った。リヴァイはもう一度その子に目を向ける。

「う…」

彼の目つきが悪いからか、子供は目が合うと気まずそうに顔を歪ませた。

「さー!エレンくん、リヴァイさん!朝ごはん食べよう!」
「!はーいっ!」
「お、エレンくん、いい返事だねえ。」

その様子を見ているとまるで恋人との間に子供ができたようだとリヴァイは感じた。ナマエとなら悪くないかもしれななんて考えながらリヴァイはエレンの前に座った。

「オイ、エレン。こぼしながら食うな。掃除が大変だろうが。」
「ご、ごめんなさい…」
「エレンくん、ほら、お皿持って食べてごらん。」
「うん!」
「…リヴァイさんって子供嫌いなんだと思ってました。意外と面倒見ようとするんですね。」
「別に好きも嫌いもネェよ。」

そっかー、よくわかんないですねー。ナマエはエレンと首を傾げあっていた。

エレンは大人しく持ってきたおもちゃで遊んだり、時折ナマエに本を読んでもらっていた。リヴァイも昼食のときにはエレンに手を洗わせてやったり、料理を取り分けてやったりしていた。エレンはリヴァイを少し怖がっていたようだが。

「おねえちゃんと、リヴァイさんは、こども、いないの?」
「あ?」

エレンの突如とした質問にリヴァイは横目に見ながら聞き返した。子供ながらに大人の男女が一緒に住んでいれば、子供がいると思っているのかもしれない。

「ふふ、いないよ。」
「なんでぇ?」
「なんでかぁ、」
「それはな、エレン、セッ「まだ結婚してないからかなぁー!!」

余計なことを言うな、とナマエはリヴァイの言葉を遮った。けっこん?と首を傾げるエレンは無垢で可愛らしかった。



昼時も過ぎ、昼寝から目を覚ましたエレンはさすがにホームシック気味だった。ぐずぐずとナマエの腕の中に収まっている。迎えまであと数時間はある。

「エレンくん、お買い物行こっか?おやつ買お?」
「おやつ…うん。」
「リヴァイさんも行こ?」
「…ああ。」

そうして3人で近くのスーパーに向かった。

「エレンくん、好きなの3つ選んで良いよ?」
「ほんと?」
「うん。じゃあリヴァイさん、ちょっとエレンくん見てて。ささっと要る物取って来ますから。」
「オレも行く。」
「誰がエレンくん見とくんですか!お菓子売り場恥ずかしいかもしれないけどすぐだから!」

そう言ってリヴァイはエレンとお菓子売り場に残された。チラチラとリヴァイを気にしながらもエレンはお菓子選びに勤しむ。エレン以外にもこれが欲しい!あれが欲しい!と親に強請る子供達がいた。子供とは不思議で単純な生き物だ。欲に忠実だし、親に頼ならければ生きていけない。ナマエにエレンを見ておけと言われたのにも関わらずリヴァイは腕を組んでぼんやりと他の子供を眺めていた。

「リヴァイさん、おねえちゃんは?」
「買いモン中だ。」

エレンは頼る人がリヴァイしかいないからかリヴァイの右手に手を伸ばしてきた。

「あのね、ぼく、おねえちゃんすき。」
「あいつは、オレのだ。」
「じゃ、じゃあまたおうちいってもいい?」
「ああ、たまには悪くない。」
「やくそく?」
「約束だ。」

いつかは、お前の遊び相手が増えてるかもしれないなんて幸せな想像をするのも悪くない。

「お待たせー。リヴァイさん、今日お魚で良いかな?」
「ん。」
「おねえちゃ!」
「あら、意外と仲良さそうにしてたんだね。」

エレンとリヴァイの繋がれた手を見てナマエは微笑んだ。

「エレンくん選んだ?あ、巨人フィギュア付いてるやつだ!好きなんだねー。」



5時を過ぎると、エレンの母親が迎えに来た。エレンは別れを惜しみながら、母親と共に帰って行った。ナマエも寂しそうな表情をして、別れを告げていた。

「かわいかったなぁー、エレンくん。なんかお母さんになった気分でしたよ。」
「そうか。」
「リヴァイさんも全然違和感なかったです!2人して手繋いでてかわいかった。お父さんみたいでしたよ。」
「そうか。」
「女の子の方がかわいいって思ってたけどやっぱり関係ないですねー」
「そうか。」
「あれ、やっぱり面倒くさかったですか?勝手に預かっちゃったし…」
「いいや、」
「ふーん…(そうか、ばっかりだし)」

2人で住んでいると、嫌な所も良い所もほとんど見えてくる。これからも一緒にいて何があるのだろうか。そこには、愛があって、何も一生を誓い合って形で縛り合わなくても良いのではないか。でも今日、エレンという存在が、それを見せてくれた気がした。ナマエとなら悪くない。いや、彼女だけだ。ナマエにとっても然り。



「…ナマエ、結婚するか」
「えっ」

なんかもっと、こう…ムードとかないんですか!と喚くナマエを他所にリヴァイはズズッとお茶を啜った。これから先どうなるのだろう。今日の様な日がまた来ると良いと思っているのはナマエだけなのか、はたまた彼もそうなのだろうか。



未来を見た気がした。


※ランドスケープアゲート
めのうの一種。
宝石言葉:愛、未来

躾に1番効くのは痛みだと思う。を言わせたかったけど、断念。
エレンにへーちょと言わせたかったけど、断念。


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