ミステイクミスチーフ

※ハロウィンのお話(ちょっと変態)


「わあ!ナマエ、そんなにお菓子持ってどこに行くんだい?っていうかそんなにどこから手に入れたの…」
「こないだ内地に行った時に給料を捧げて買ったんですよー!あ!トリックオアトリート、ハンジさんっ!」

早くあの人の所に行きたいと、急ぎ足になっていた所をハンジさんに見つかった。だけど彼女を無視するなんてできない。勝手に口角が上がるのを抑えられないまま、今日1日だけ有効の呪文を投げかけた。

「ああ、ハロウィンだね!だけど困ったな…お菓子は持ってないよ」
「しょうがないなあ、ハンジさんには特別に1つだけあげますねっ」

このお菓子は会った人皆にあげるためのものではなかった。それに、あたしが悪戯したいのはただ1人。だから1つだけ、お菓子を手にとって彼女に差し出した。

ハンジさんと別れて再びお菓子を落とさないようにしながら駆け足で目標を探す。廊下の窓際を走りながら、ふと外に目を向けるとなんてラッキーなのだろう!さっそく目標を見つけ出した。でもあたしが居るのは2階。彼が居るのは1階。というか外だ。このまま下まで行っていたらチャンスを逃してしまう!そう判断すると割れんばかりの勢いで窓を開け放した。今日をこんなにわくわく過ごしているのは調査兵団の中できっとあたしだけだ!


「エルヴィンだんちょー!!お菓子くれなくていいから悪戯させてくださーいっ!」


満面の笑みで窓から上半身を乗り出した。

バサバサバサ…!と音を立ててバケツ一杯に入っていたお菓子がエルヴィン団長の頭上に降りかかる。

「あははは!ハッピーハロウィン!」

最後にジャックオランタンの飾りを団長の頭にクリーンヒットさせて仕上げた。エルヴィン団長の周りにいる兵士は顔が青ざめている。なんでだろう、今日は楽しい楽しいハロウィンだぞ、無礼講じゃないの、と、不思議に思う。本人に至っては肩をわなわなと震わせているんだ。笑いたいのを耐えているのかもしれない。いたずら完了!と笑いながら窓を閉めて逃げた。

あんなに肩を震わせて喜んでくれるなんてお菓子を大量に買い込んで良かった。本当は欲しかった服があったのに我慢したのだ。飛んでいったお金達に感謝。


「あ、エルヴィン団長に調査報告書出しに行かないといけなかったんだ」
「私ならここに居る」
「ワー、さすが団長。でもごめんなさい、書類は今持ってないんです。またあとで。じゃ!」

背中を向けて颯爽と立ち去ろうとすると、骨が音を立てそうなほどの力で肩を掴まれた。

「さっきは素敵な悪戯をどうも、ナマエ」
「ひっ…」

両手を頭の上で纏め上げられ壁に押し付けられる。彼の足が両腿も間に割り込まれ、退路は断たれた。

「お気に召されませんでした…?」

こ、これは怒ってらっしゃる…。さっき彼の周りにいた兵士たちのように血の気が引くのがわかった。あ、ああいう子供っぽいの嫌いでしたかね。ゾンビの仮装をして夜に驚かすとかの方が良かったかな。それにしたってどうしてこんなに押さえつけられてるのでしょうか。

「いいや、とても気に入ったよ」
「そ、それは良かった…はは…じゃあ手を離しましょうか」
「私も今日を楽しまないとな」
「え?」
「ナマエ、トリックオアトリートだ」
「え、あ、お、お菓子なんてもう持ってませんよ…」
「…それは仕方がないな」

一瞬手の力が緩んだ。良かった、これで解放される、と思ったら大間違いだ。エルヴィン団長の手は器用にあたしの体重移動装置のベルトを緩めている。

「は?え?何してんですか」
「もうお菓子を持ってないんだろう?」
「さっきあげたじゃないですかあ…!」
「さて、なんの事かな」
「ちょっ、どこ触っ…!セクハラ!!」
「セクハラなんて上司に対して失礼な。お菓子をくれなきゃ、悪戯、だ。正当だろ」

獣にでも襲われそうな気分だ。首筋に彼の歯が当たって思わず上げた叫び声はどこかの部屋に連れ込まれた瞬間途切れた。


解放された後、床に散らばったキャンディやチョコレートを見て、初めてお菓子を恨みました。あれやこれやに使われたなんて絶対誰にも言えない。一刻も早く忘れよう。

お菓子を笑えないくらいたくさんあげたら逆に喜んでもらえると思っていたあたしの考えは間違っていたみたいだ。でも笑って欲しかったの。今日くらい。悪戯してる時の彼の方が嬉しそうで活き活きしてたなんて大誤算。

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