鮮やかに広がる

※大学生と社会人エルヴィン


「ナマエ、明日の夜どこかに食べに行こうか」
「あー…、すみません。明日ゼミの子と、ご、ご飯なんです」

どうも最近ナマエが挙動不審である事にエルヴィンは気がついていた。今も、目をそらして何故か汗をかいている。こんな時、彼女が嘘をついている事はエルヴィンにはお見通しだった。時々こうやって不審な動きをして、帰りも遅い事が多いし、夜も情事に及ぼうとすると断られる事があった。

普段学生として大学に通っているナマエが、そこでどう過ごしているのかは彼女がする話でしか聞いたことがない。もちろんそこには男子学生も居る訳だ。彼女はまだ若い。たくさんの出会いがあって、たくさんの誘惑がある。それはもちろん、ナマエより長く生きている分、エルヴィンも経験しているし、わかっている事だった。

なんとなく、ナマエと自分以外の男が並んでいる所がエルヴィンの頭に浮かんだ。けれど何の確信も無いので、いつもと同じようにナマエと過ごすしかないのである。

いつナマエが他の人が良い、そう言っても良いように、理解はしているつもりだった。自分は彼女よりも幾分か年上だし、何より彼女に幸せになって欲しかったから。


けれどある日、エルヴィンは突然自制が効かなくなった。 

ナマエが帰って来た途端、手を引いて、無理矢理ベッドへと連れていき、放り投げるように彼女を押し倒した。

「ナマエ、最近誰と何をしてるんだ?」
「…ッい、痛…!」
「君には幸せになって欲しいけど、隠されるとあまり良い気はしないな…。嘘をついてまで他の男と居るだなんて」
「えっ、な、何の事ですか…?」

エルヴィンはナマエが他の男と連絡を頻繁にとったり、2人きりで出かけている事に気が付いていたのだ。今日も、その姿を見てしまった。そんな事をする子じゃないとわかっている、だけど疑ってしまう自分が居て、抑えきれなくなったのだ。
ナマエは何故彼が感情を剥き出しにしているのかわかっていなかった。それがまた、エルヴィンを煽る。逃げられないようにしてしまおう、そう思ったら手は止まらなくて、彼女の手をまとめ上げ赤い印をその首筋に残していく。服に手がかけられると、ナマエは身を捩って嫌がった。

「い、やっ…痛いっ、…ま、待って!待ってよ、エルヴィンさんっ…!」

突然の事に思考が着いて来ず、エルヴィンの表情と力の強さにただ脅えていた。初めてと言っていいくらい、ナマエはエルヴィンが怖いと思った。


「怖い…っ!」


彼女はただ怖いと言って、涙をこぼす。その表情を見た瞬間、エルヴィンは頭を鈍器で殴られたような気分になった。大人気ない。自分が情けなくてやっと我に返ると、項垂れて声を絞り出す。

「隠し事をされると、さすがに俺も辛いよ」
「あ、の…何か誤解させてたら…、ごめ、んなさい…あたし、確かに、嘘…つきました」
「…わかってる」
「でも、違うんです。あの、明日…、エルヴィンさんの、お誕生日だからっ、プレゼントを選びたくて…っ」

そこまで言われて察しがついたと同時に、更に情けなくなってゆるりとナマエを抱きしめた。

「それで…、その、プレゼント、喜んで欲しいなって思ったらっ、ぜっ、全然決められなくって…っ」


大学の男友達に聞いたり、リヴァイやハンジにも聞いたりしたら、余計訳がわからなくなってしまったと半泣きでナマエは言った。だから連絡を取ったり、店に行ったりしていたのだ。1人で決められそうもなく、エルヴィンに秘密で毎日のように誰かとプレゼントを選びに行ったがこれで喜んでもらえるのかと思うと、何も買えなかったらしい。


「なんだ、他の男でもできたのかと思ったよ…良かった…」
「そんなのじゃないです…でも、ごめんなさい…」
「いや…すまない、ナマエ…。君と私は歳が離れているから…いつかはそういう時があってもおかしくないとわかってるつもりだったんだ…」
「そんな事、言わないでください…もー…また泣いちゃううう…エルヴィンさんと、一緒に居たいです…!」
「ああ、ごめんナマエ…私も傍に居て欲しい…」

彼女が大切で愛おしいから故に嫉妬してしまった。大人気なく無理強いしてしまった。精一杯絞り出した言葉が傍に居て欲しい、なんて随分弱ったものだと、エルヴィンは自分を嘲笑った。

ナマエは泣きながらエルヴィンに手を伸ばした。エルヴィンに誤解させた事、プレゼントを買えてない事をひどく後悔していた。お互いにお互いを求めているのだとわかって苦しいほどに抱き締め合うと、くぐもった声が聞こえてきた。

「明日、一緒にプレゼント選びに行きませんか…?」
「そんな事しなくてもナマエが一日中一緒に居てくれたらそれで良い」
「えええ、駄目です…それは」
「良いんだ。ありがとう、ナマエ」

エルヴィンはナマエの髪を撫でてたくさんのキスを落とす。ナマエもエルヴィンを求めるようにそれに応えた。

「じゃあ、1つだけお願いしたい事がある」

唇が触れるか触れないかの距離でエルヴィンは囁いた。

真っ赤になりながら優しくしてくださいと頷く彼女と出会えた事が、今は生まれて良かったと思える事かもしれないと、ナマエに深く口付けながらそう感じた。

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