04
目が覚めると、体中に包帯が巻かれていた。



そういえば壁外調査中に怪我を負ったんだ。どうやって帰って来たんだろう。全身がまだ鈍く痛い。ここは医務室かな…。

眼が覚めた事を伝えるために近くにいた兵士に声を掛けた。

「あ、の…」
「気がついたか、ナマエ。調子はどうだ?」
「何とか…」

見た事のない兵士なのに何であたしの名前を知っているんだろう…。まあ、それは有り得る事だし良いとして、何度か足を運んだ事がある医務室の雰囲気はあたしが知っているものとは少し違う気がした。

「訓練中に怪我してそれから3日間も寝てたんだぞ。」
「訓練中に…?壁外調査中じゃ…?」
「何言ってんだよ。3日前は今度の壁外調査に向けて班別に訓練してたんだ。そしたらお前は突然班からはぐれちまって、見つかった時には怪我して倒れてた。大丈夫か?頭は強く打ってないはずなんだけどな…。」


何かがおかしい気がした。


「あの、あなたの名前は…?」
「参ったな…。記憶障害か?俺はお前と同じ班でずっと行動してたんだが…」

彼の名前を聞いても誰かわからなかった。でも、記憶障害なんかじゃない。目が覚める前の記憶はしっかりある。巨人に捕まったラファエルを助けて、それから木にぶつかって、エルヴィンさんに見つかって…。
彼が言っている事とあたしの記憶は一致していない。

何となく下手に動くとまずい気がして、あまり口は開かなかった。あたしを診てくれていたその平兵士が上官に目を覚ました事を報告すると言って出て行く。

「本当に記憶喪失…?」

何とも言えない不安に襲われる。上官を呼んでくると言っていたから、とりあえずハンジさんか、ミケさんか、その辺りの人に会えるのだろう。

その瞬間、先程出て行った兵士が上官らしき人物を連れて戻って来た。上官はベッドの脇にあったイスに座って、あたしの顔を見た。

「大丈夫か、ナマエ」
「まだ痛みますが、平気です。」

だ、誰だ…この人。見た事がない。そんな事有り得るだろうか。一応エルヴィン団長に就いて働いていたし、分隊長、班長クラスの人ならわかるはずなのに。

「あの、ハンジさんか、ミケさんはいらっしゃいますか?」
「それは誰だ?同じ班で行動してた兵士か?」
「え…?じゃ、じゃあエルヴィン団長は…?」
「…本当に記憶障害みたいだな。今の調査兵団はそんな名の団長ではない。」

上官は平兵士を困ったように仰ぎ見る。…困っているのはあたしだ。
上官らしき人物はしばらく考えて、そして口を開いた。

「とりあえず、休養しなさい。それからの処遇は復帰してから決めよう。」
「え、あの調査兵団には戻れないのですか?」
「それも込みで考える。しかし記憶が無いのはまずいだろう。とにかく体を治すのが先決だ。」
「そ、んな…」

頭が上手く回転しない。あたしは知らない人達なのに、何故か彼らはあたしの名前を知っている。でもハンジさんも、ミケさんも、エルヴィン団長も、居ない…?



なんだこれ。



あまりにもおかしい状況に本当に記憶に障害を負ってしまったのだと、認めざるを得なかった。


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