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「あたし…夢?を見たんだと思ってました」


「壁外調査から戻る時意識が無くなったじゃないですか。それで、目が覚めたら、エルヴィンさんが訓練兵で…色々あって。もしあたしが死んで、そのまま時が過ぎて、もう1度あたしと会う時が来たら、と思って、それを渡したんです。あの時はとっさに必ず戻るって約束しましたが、守れませんでした…。ごめんなさい…」
「ああ、俺はあなたをあれからずっと待ってましたよ」
「…な、なんか変な感じ…」

ずっとという言葉を強調して、わざと敬語を使ってあの頃と同じように話すので違和感を覚える。彼はあたしの困惑した表情を見て笑った。


「それでこの手紙の最後は…どう受け取ったらいいかな」


あたしが彼に渡した紙は、まあ思い出みたいなものを手紙にしたもので、まさか渡した本人にこれを見せられるとは思いもせずに書いたものだった。だから恥ずかし過ぎて、頭がこんがらがって言葉に詰まる。

「あ、なんか、あたしこれ書いた時頭がおかしかったのかも…」
「…そうなのか?」

突然エルヴィンさんの声音に元気がなくなる。そんな顔されたら、困る。

「えと…あの、うわあああ恥ずかしい!」

布団を引っ張って顔を隠す。ああ!存在自体をここから消してしまいたい…!やっぱりあたし戻ってきたらダメだったんだ!!こんな恥ずかしい事書かなければ良かった。
うわー、とか、ううー、と奇声を上げるあたしを、エルヴィンさんは教官のナマエは頼りがいがあったのにな、と笑っている。別にあの時も今も、あたしは変わってるつもりはない。やっぱりあたしはあくまでもあなたの部下だ。

「でも、ナマエの言葉には多くを考えさせられた」
「え…?」
「君に沢山の事を教えてもらった。話したい事も沢山あった。きちんと伝えておけば良かったと、ずっと後悔していたんだ。だから、君が調査兵団に入ってきた時は心底驚いたよ。また会えると思ってもみなかった」

確かにエルヴィンさんからしてみれば、驚くのも普通だ。一度居なくなった人が、それからずっと後にまた現れるなんて。

「歳を重ねると、あの時のように純粋に生きる事もできなくなったが、ここまで生きた甲斐があったと思ったよ」
「そんな、言いすぎですよ…」
「そうかな。死んでいたら、君に再び会う事はできなかったんだ。信じ難い話だが…本当の事だと思って良いんだろうか」
「…多分、こうやってまたエルヴィンさんと話せているので、それが真実だと、思います」


目が合うと、エルヴィンさんの手があたしの頬に添えられる。耳をなぞられて、その暖かい掌に擦り寄ってしまいそうになった。再びあたしは腕の中に閉じ込められた。トク、トク、と心臓の音がする。あたしのと、エルヴィンさん、2人分。体が離れて、彼はその青い瞳が細めた。


「で、これの事についてだが」
「あ、」

ひらり、と目の前でチラつかせる。出来る事なら忘れて欲しい。だけれど、彼がそんな事する筈がないだろう。

「もう1度会えたんだ。あの場所で本当の事を教えてくれ」

その時にまた色々話そう。笑ってぽんっと頭に手を置かれた。その瞬間もうダメだと思った。心の中で高まった何かがぶわりと、氾濫を起こす。どうしようもない。彼を見上げる事すら苦しい。


この人が好きだ。



追伸.あなたに会う前からあなたが好きでした。


1つ目の「あなた」は若い頃の、2つ目は今のエルヴィンさんを指す。壁外調査に出る前の晩、もし何が起きても、必ずもう1度出会えると信じてそう書いた。


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