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あたしが居た時代と同じように、開門を告げるベルが鳴り響いて門が上がってゆく。最後に壁外に出てからそんなに長くは経っていないのに、鎖の音、石と石が擦れる音が懐かしかった。いつもだったら先頭にエルヴィン団長が居て、あたしは後ろから彼の背中を見ている。でも今はそうじゃない。


多くの兵士が一斉に馬を走らせ始める。自分達を取り囲む壁を抜け出した瞬間、初めて壁外に出た時に見た景色を思い出した。と言ってもあたしの初陣の記憶はそこしかないのだけれど。
門の外に出て合図が出た後、陣形を展開させる。緊張と興奮、久しぶりの感覚に口角が上がりそうになった。こんな状況でそんな表情するなんて、ハンジさんとか、その辺の人くらいだろう。そう言えば、ハンジさんが壁外に出て笑わなかった事なんて無い。それを見たリヴァイさんの顔が怖いといつも思う。だから、外であまりあの2人には近づきたくないのが本音だ、今日も…、と思った所で煙弾の音に気付き、我に返る。
彼らは今此処には居ない。そして見上げると、巨人の来襲を示す煙弾が上がっていた。


一瞬、耳鳴りがして時間が止まったみたいだった。


考える前に体が動いたって言うのはこういう事なのだろう。手綱を引いて走る方向を変える。誰かの声が聞こえた気がしたけれど、そんなの構っていられない。

こんなの許されない。きっと壁内に帰ったらあたしは調査兵団に戻る事など出来ないだろう。優先すべきものを間違ってる。きっと誰かがこうやってあたしを非難する。それなのに止まらないのは、あたしが此処に居る意味が自分でわかっているから。

巨人の足音が近くなると人間の声や馬の嘶く声も大きく聞こえる。息が止まりそうだ。

「あ、」


ちょうど森のような所に入った所で、騒音の中から探していた声を見つけだした。


「くそ!あの野郎…ッ!仕留める!」
「やめろ!!アウグスト!!」

あたしが声を出そうとした時には、アウグストと呼ばれた兵士は巨人の手に捕らわれていた。エルヴィンさんが彼を助けようと立体機動に移ったのが視界に入る。すぐにあたしも立体機動に移ってアウグストを口に入れた巨人の顎に刃を向けた。血が目の前を飛び散る。アウグストのものなのか、巨人のものなのかわからない。

「っ出せ!!」
「!?ナマエさん…っ?」

刃の入りが浅いと思ったけれど、なんとか顎関節を削ぐ事ができた。ドサリ、と落ちたアウグストは片方の肘から下が無くなっていた。まだ止血すれば間に合うはずだ。


「エルヴィンさんっ!!彼を頼みます!すぐに逃げて!ここにいつまでも居たら…っ」


死んでしまう、そう言うつもりだった。


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