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「実は…エルヴィンさん、そっくりなんです」
「…は?」

突然何を言い出すのかと思い、エルヴィンは思わず怪訝な顔をしてしまった。


「あたしが大切って言ってた人にそっくりなんですよ」


どうでもいいかもしれないですけどね。ナマエはへらりと笑って言った。


「そうだ!」


彼女は、まるで名案でも閃いたように表情を明るくしてエルヴィンの額にかかる髪に手を伸ばすと、そっと髪を分けた。

「ふふ、やっぱり似てる」

それもそうだ。似てると言っても、それはエルヴィン本人なのだから。その姿を見て、ナマエは嬉し気に微笑んだ。


「エルヴィンさん…」


もう一度、名残惜しそうにナマエは彼の金髪を分けた。さっきまで笑っていたのに、急に不安げな表情に変わる。しかし、自分を見上げる瞳は星の光を吸収して、綺麗だと、エルヴィンは思った。

エルヴィンはナマエがいきなり寄って来て自分の髪の毛を触った所為で妙に心音が速まるのを感じた。

似ているから、自分を気にかけてくれたのだろうか。自分の事は見てくれないのだろうか。


「もう一度会えた時は、ここで会いましょう。」
「は?何を、言ってるんですか…」
「気にしなくていいから、頭の隅にでも置いといてください」


まるでナマエが居なくなるとでも言うような言い草に、エルヴィンは堪えきれず、ナマエの手を掴み上げる。


「ナマエさん、」
「あ、ごめんなさい、嫌でした?」
「違う」

きっぱりとそう言ったエルヴィンを不思議そうにナマエは見つめた。手を引っ込めようとすると力強く握りしめられる。

黙ってお互いを見つめると時間が止まったようだった。ナマエはエルヴィンのその真剣な表情を眺めて眉をひそめる。


居なくなって欲しくない。彼女の事がずっと気になっていたのは、自分を通して誰かを見ていると感じたからだけじゃない。きっと自分を見て欲しかったからだ。


そう思うと、体が勝手に動いていた。


エルヴィンはナマエの手を力任せに引っ張る。

唇が重なった瞬間に、ナマエが目を見開いたのが微かに見えた。


「…っ!え、エルヴィンさん!?」
「何ですか、年上のくせに、恥ずかしがるなんて…」
「いやっ、年上のくせにとか関係なくて、むしろあなたの方があたしにとっては…!!」
「もう良い、黙ってくれ」
「あ、わ…っ」


真っ赤に染まる彼女の頬に手を伸ばし、再び唇を奪う。


エルヴィンにとって初めて緊張したキスだった。

彼女が誰を見ていようと、ナマエが好きだった。


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