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人類を救うために沢山の犠牲を出してきた。その犠牲のおかげで今の人類がある、というのは苦し紛れの言い訳なのだろうか。大事なものを切り捨ててでも、戦わなければならない。調査兵団の団長であるエルヴィンの場合はなおさらであった。それでも、1人の男性として考える事もあった。人はいつだって、済んだ事を振り返ってから後悔するのだ。…何度後悔を繰り返せばいいのだろう。


後悔するくらいならば、伝えておけば良かった。


「エルヴィンさん、あなたにはいろんなものが見えると思います。その所為でたくさん苦しむ事になるかもしれない。…あたしが言える事じゃないんですけどね。だけど自分を信じ抜いてください。死なないで、自由になるまで。」

自分が訓練兵を卒業し、調査兵団へ入って間もない頃、調査兵団のジャケットを羽織った彼女は自分よりも幾分か年上のくせにずっと抜けなかった敬語でそう言って、消えた。

訓練兵だった頃は、自分に兵法を教えてくれ、立体機動の訓練もしてくれた。そして時々、何かを自分と重ねるようにしては、あなたは素敵な部下に囲まれて、かっこよく戦っていると思います、と未来の話をしていた。そんな事わかりっこないだろうと言うと、そんな気がするんですよ、と言って悲しげに笑うだけだった。


彼女はいつも自分を見守ってくれていた。強くさせてくれた。


伝えたい事は山ほどあったのに、消えた。


…どうしてこんな事今思い出したのだろう。

エルヴィンは馬を走らせながら、もう随分昔の事を思い出していた。
そんな場合ではないのに。


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