11
危ない目に合ったら、自分を守る、と彼女が言ったのは、自分がまだ壁外に出た事もない一端の訓練兵だからなのだろうか、彼女は自分を通して、何を見ようとしているのだろうか、とエルヴィンは彼女に言われた事に、少し心音を速めながらも、反応した。



「自分の身は、自分で守ります…」
「あ…そうですね、あはは、あたしなんかに守られてもね」
「むしろナマエさんと一緒に戦ってみたい。」
「…はい、いつか、きっと。あたしも必ず調査兵団に戻ります。」

まただ、とエルヴィンは思った。彼女は自分を何かと重ねるように自分を見る。初めて会った時からそうだった。思い違いなのかもしれないが、こういった事ばかりを考えていたおかげで、いつしかエルヴィンは彼女の事が気になっていた。別にそれは、恋をしているとかそういう感情ではなく、ただ、彼女には何があるのか、という詮索に近い気がする。

「ナマエさんは、何故調査兵団に?」
「それ、聞いちゃいます?」
「いえ、すみません…ご迷惑でしたか」
「違いますよ、何となく言ってみただけです。あたしが調査兵団を選んだのは、」

ナマエは、憧れて、背中を追った彼の事を思い出した。その彼は、今、目の前にいるのだけれども、出会った頃とは違う彼だ。自分が調査兵団に入りたいと思ったのは、エルヴィンが居たというのが大きな理由だった。

「最初は、ただ、壁の中に収まっていたくない、という思いからでした。でも、あたしの上司に当たる人の目を見た時に、この人についていきたいって、人類からこの人を失くしたくないって、直感でそう思ったんです。あたしはその直感を信じて調査兵団に入りました。」
「調査兵団に入って、後悔はしてないのですか?」
「しましたよ、めちゃくちゃ。あたしはそんなに強い人間じゃない。目の前で人が巨人に食われていく姿は今でも見るに堪えないです。だけど、歩む事を止めたくなかった。少しでもその人と、仲間と戦いたいと思ったから。」
「その方は今もご存命なのですか?」
「もちろん。」
「そこまでの方が、今の調査兵団にいらっしゃるのは知りませんでした…」
「あ、」


エルヴィンにそう言われてナマエはしまった、と思った。エルヴィン団長やリヴァイ兵長のように、人類の反撃に貢献している人が今の時代に居るのだろうか。


「ま、まあ、あたしはエルヴィンさんもそういう人になれるんじゃないかなーと思っております…」
「ナマエさんは、俺を良く評価してくれますね」
「実際に成績良いじゃないですか」
「ただそれだけですか?」
「そ、れだけです!努力してる人を褒めるのに何か別に理由が要ります!?」
「いえ、それ以上に何かあるのなら逆にお聞きしたいですね」
「聞いてきたのはエルヴィンさんの方じゃないですかあ!!あたし、教官ですからね!一応!」
「ははは、すみません、教官」
「こんな時だけ教官呼ばわり…本当ずるいです。」



自分を気にかけてくれるのは嫌な事じゃない、何かと自分を気にかける彼女が何か他の感情を持っていれば良い、とエルヴィンはひっそりと胸の内で明かした。



逆にナマエは、いつか本当に墓穴を掘ると、冷や汗をかいていた。


「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -