20:200人以上の部員



 部活が終わってすぐ、跡部が誰かに声をかけていた。両手を腰に当てて、たまに右手だけを身体の前で動かして何か説明をしているらしかった。跡部は後姿でもわかるけど、ここから見える相手の顔に、俺は見覚えはない。ここにいるってことはテニス部…なん、だろうな。
「おい、跡部」
 ずっと見ているとどうやら話が終わったらしく跡部がくるりとこちらを振り返って歩いてきた。俺が声をかけると目を合わせて立ち止まる。
「なんだ向日」
「今、誰と話してたんだよ」
「あん?矢島がどうした」
「やじま?あいつ矢島っていうの?テニス部?」
 跡部が矢島と言った奴の背中と、跡部の顔とを交互に見つつ質問をぶつけると、跡部が「あーん?」って言う時の顔をした。
「あいつもテニス部だ。ついでに言うと1年だ。まったく、弱いやつらに興味がないのは分かるが、顔くらいは覚えてやれ」
 そう言うと、また歩き出す跡部。そういえば跡部って、部長なんだから部員の顔と名前を覚えておくのは当然のことだとか言って200人以上いる部員全員覚えてんだっけ。
「待てよ、あと一個質問。その…矢島ってやつと何の話してたんだ?」
 早いとも遅いとも言えない絶妙な速度で歩く跡部の横についていきながら再び質問を投げると、跡部がチラッと俺の目を見た。
「ああ、矢島が休憩時間のときに壁打ちしてんのを見かけたんでな。ラケットの面が上を向く傾向があったから教えてやっただけだ」
 言って、再び前を見据える跡部の言葉に「ふーん…」と返事をして俺は立ち止まる。振り返って、その矢島ってやつを探す。あ、やべーもう顔忘れちまった。なんか目の丸いやつだったんだけどな。俺の見る先には、コート整備のために道具を持った1年どもの姿。似たようなのが何人もいて誰が矢島だかわからない。
「でも跡部は、あいつら全員誰が誰だか見分けがつくんだろうな…」
 ぽつりと呟いてみると、跡部ってすげーんだなぁ、と地味に感心してしまった。

























***

200人以上とか信じられん(笑)


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