46:服のセンス



「宍戸さん」
「あ?なんだ長太郎」
「俺、この間神奈川の親戚の家にお邪魔してきたんですけど」
「おお、土産うまかったぜ。ありがとな」
「あ、いいえ」
「で、その親戚の家で何かあったのか」
「はい。親戚の家というか…街の本屋さんで、ばったり会ったんですよ」
「誰と会ったっていうんだよ」
「立海大附属中の柳さんです」
「立海の柳…3強の?」
「はい。あの柳さんです」
「ハッ、そりゃまたえらい偶然だな」
「ええ。声をかけてきたのは柳さんだったんですけど、少し時間があるからって二人で話し込んじゃったんですよね」
「へぇ…しっかし柳も固そうだからな、合う話題なんて少ないんじゃねーのか?」
「いえ、それがなかなか興味深い話ばかりで。特に、全国大会前に跡部さんが立海に来たっていう話とか」
「は?跡部が立海?」
「はい。なんでも、少し真田さんと打ち合いをしていたところを幸村さんに止められたとか」
「…はーん……跡部のやつ、抜け目がねーじゃねーか」
「ただ、その時の跡部さんの服のデザインがなんとも奇抜…いや、粋だったとか」
「そりゃな。跡部の私服は俺たちみたいな庶民がどうこう言えるもんじゃねーからな」
「そうなんですけど…フード付きのノースリパーカのプリントが」
「なんだよ」
「タカだったらしいです」
「……タカ?」
「はい。今にも服から飛び出してきそうなほどの、迫力満点のタカだったそうです」
「…どういうセンスなんだよ、それは」
「さあ…俺も実際に見たわけじゃないので…」
「だいたいどこに売ってんだよ、そんなパーカ」
「きっと俺たちみたいな庶民がどうこう言えない場所じゃないですか?」
「そこで俺の言葉使うんだな」
「はい」
「はいって…とにかく跡部はセンスはいいけど、たまに奇抜ってことだろ?」
「そうですね。以前俺が見たときはグレーのシャツに黒っぽいネクタイ、それから白黒チェックのネクタイピンしてました」
「想像しやすくて嫌だな」
「でもすごくかっこよかったですよ。制服以外でシャツにネクタイなんてキッチリした服装、俺が着たら執事みたいになっちゃいますよ」
「だろうな」
「いえ宍戸さん、ここは否定してほしかったです」
「お、すまん。想像に容易くて、つい」
「余計否定できてないです」
「あーとにかくだ、跡部の服のセンスは俺たち庶民がどうこう言えるもんじゃねーんだよ」
「そうですね、俺たち庶民がどうこう言えるものじゃないんですよね」
「そういうことだ!」
「はい!」

 さ、遅くならねーうちに帰るぞ!と視線を合わせて歩き出したものの、そう言う長太郎も跡部と同じく"金持ち"の類に入るんだけどな…とぼんやり思ったのは、きっと俺だけじゃないはずだ。

























***

なんたってバイオリンにピアノにテニスですから!長太郎ん家も金持ちじゃん!富裕層じゃん!

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