18:身長



「跡部、お前確か俺より身長低かったやんな?」
 跡部の後ろを歩いていると、ふと気になったので声をかけてみた。するとちらっとコチラを振り向いてから「あーん?」と返事をしたが、その眉間にはシワが刻まれていた。おっと、もしかしてタブーやったんか。
「確かにテメーより低いが、そうたいして変わらねーだろ」
「俺は今178センチや。跡部、お前は何センチやねん」
「175だ」
「ほーう。3センチ勝ったな」
「バーカ。身長で勝ち負けをつけてどうする」
「なんや、身長っちゅーもんは高ければ高いほど、何もせんと相手を見下せるんやで。高いほうが得やろ」
「たった3センチでもか?」
「たった3センチ、されど3センチや。単位下げて言えば30ミリやで」
「そりゃ単位を下げて言えば数字は増えるが結局のところこんなもんだろ?」
 相変わらず俺の3歩くらい前を歩いている跡部が不意に手をあげる。まるで何かをつまむような手の形。親指と人差し指の間で3センチを表現しているらしい。
「せやけど、その3センチの間にミリっちゅーんが30個も並ぶねんで」
「バカかテメーは。そんなにミリ単位が好きならミジンコにでもなってろ」
 もう一度こちらを見た跡部の顔は、なんとも面倒そうな顔やった。いかにも、何言ってんだこいつアホか?とでも言いたそうな表情。でもな、跡部。話戻るけどな、俺たまに気になるんや。
「手塚と並んだ時に、ちょっとだけ低いやろ」
 と、言った瞬間。跡部がピタッと立ち止まった。本当に突然やったもんやから3歩くらい後ろの俺は止まりきれずにぶつかりかける。ちょ、跡部、なんで急に止まんねん。と呟くと、今度は身体ごと跡部がコチラを向いた。
「手塚と俺が?並んだ時に?俺様のほうが小さいってのか?あーん?」
 跡部の言葉がすべて疑問系になっているところを見ると、どうやら気に障ったらしい。たった今ぶつかりかけたところやったから、ちょっと近い距離で思いっきり睨まれる。ありゃりゃ、高貴が故にキレることのあまりない跡部が若干キレてるやん。こりゃアカンな、どうにか機嫌直してもらわんと、今からの部活がつらいモンになったら俺が恨まれる。200人近くから。
「いやいや、そんな大した差やないねん」
「テメーさっきたかが3センチされど3センチと抜かしてたじゃねーか」
「それは俺と跡部の場合やん」
「お前と手塚でも変わらねーだろ」
「あ、そういえば手塚は俺より身長たか……」
「されど3センチ以上ってところじゃねーか」
「しもうた。口が滑ってもうたわ」
「お前の口はずっと滑りっぱなしだろ。今日はやけに俺様をおちょくってくるじゃねーの。あーん?」
 アカン。この眼力アカン。目どころか、目を通り越して胃に穴が開きそうや。そんくらい睨まれる俺。しもうたなー、つらいわこの眼力で睨まれるん。ちょ、誰か通らんかな。誰かおるやろ、この時間にテニスコートに向かうやつ。ていうかあいつ、あいつおらへんのかい今日は。
「樺地!樺地おらんのか今日は?」
「樺地?先生に手伝いを頼まれてるらしいから部活には遅れると、さっき鳳から聞いた」
「そか。わかった樺地はええねん。うん、あのな跡部。すまんかった俺が悪かった」
「あん?」
「別に身長なんてモンは、これからも伸びる可能性は十分にあるんやろ。俺らまだ中学生やし」
「………」
 とりあえず樺地に頼れないとわかった時点でササッと謝ってみる。すると跡部の顔がだんだん納得のいかないといった表情に変わってくる。よし、ええ感じや、このままどうにかこうにか、機嫌を…
「…行くぞ」
 さて次はどうしたもんかと思っていると、跡部が再びくるりと前を向いて歩き出した。機嫌が直ったのかと思って急いで跡部に追いついて顔を覗きこんでみると、いつものようにジロリと見られて「邪魔だミジンコ」と言われてしまった。俺、ミジンコで決定かいな。へこむっちゅーねん。

 その翌日から、牛乳を飲む跡部がたびたび目撃されるようになったという。

























***

くだらねぇ。でも跡部が身長気にしてたらかわいい(笑)



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