乾×ユウジ



「俺は青春学園3年、乾貞治だ。よろしく」
「おう、俺はしてんほ…」
「四天宝寺中3年一氏ユウジ、クラスは8組、出席番号は22番、誕生日は9月11日、血液型はB型、好みのタイプは金色小春」
「……って言わせろや!」
「間違ってないだろう?何か不満かな?」
「いや、そらぁ…好みのタイプが小春っちゅーとこまで言うてもらえれば、文句はあらへんけど」
「ふふふ。そういえば一氏、キミは金色と木手の対談に乱入したそうだね」
「おう。乱入したったで。浮気は許されへん」
「しかし、あくまでもあれは対談だ。浮気ではない。対談が浮気というのなら、今キミも浮気していることになる」
「いや、ちゃうねん乾。対談は構わへん。ただな、小春のやつ…ええ男がおったら、すぐにくっつくねん。俺としてはそれが……」
「それが?」
「…さみしいんやんか………」
「…………おお。これは予想以上の反応だ」
「なにがや」
「一氏ユウジ、キミのそのズレた恋愛感覚が非常に興味深い。いいデータが採れそうだ…、ちなみに金色小春のどこが好きなんだろうか。教えてくれないかな」
「な、なんやお前。人のことアバズレ扱いか!しかも小春のええとこ教えろなんて、お前まさか小春に気ぃあるんとちゃうんか!」
「ふはは、まぁまぁ落ち着くんだ。キミには申し訳ないが、俺は金色小春に興味はない。キミの感性に興味があるんだ。さ、どういうところにドキドキするのかな」
「…わっけわからんわ。まぁええわ、こいつ東京人やしな。遠距離なんて続くわけもあらへん。……せやなぁ、小春のええとこやろ?」
「ああ。別にいいところに限定する必要はない。あくまでもキミ自身の感覚で、どういうところが好きかを答えてくれればそれでいい」
「俺の感覚で?…せやんな、もうそこにおるだけで安心するっちゅーか。でも安心するけど、刺激的でもあるんや」
「安心するのに刺激的…?これは不可解なデータだな。興味深い。どういうことなんだ」
「なんやこう…俺にもようわからへんのやけどな、小春が近くにおると、ふわふわーっと安心するねんけど、でもどっかでドキドキすんねや…不思議やろ?」
「ああ……なんて不思議な現象なんだ。しかしそれはやはり恋愛的な意味合いで見ているから起こり得るもの…なんだろうな」
「せや。銀にも妙な安心感は感じるけど、小春とは違う。小春は将来、俺の嫁になるんやしな」
「法律的にも世間的にも難しいが、一緒に住むくらいならば出来ないこともないからな」
「いいや…変えてみせるでぇ、常識っちゅーやつを!愛の力で!」
「ふむ…本気で言っているところが非常に清々しい」
「………にしても乾」
「ん?なにかな?」
「お前、変わっててんなぁ」
「えっ!?い、いや、変わってなんかないさ、普通だよ普通」
「いや、変わってるで。普通、他校のやつらじゃ俺が小春のこと語ると止めに入るで?それをお前は、おもろそうに聞いてくれるやんか」
「ま、まぁ実際におもしろいからな。キミのような人物と話す機会はあまりないのでね」
「…せや、確かお前もデータマンやったな」
「ああ、そうだよ。残念ながらキミの愛する金色小春には負けるみたいだがね」
「まぁ、お前のぎょーさん持ってるっちゅーノートの内容が、小春は頭の中に入ってんねんからな」
「やはり記憶力にも限界はあるからな」
「せやけどな、お前と小春の大きな違いがあるんやで」
「ん?大きな違い?」
「ああ。お前や、立海の柳とか言うやつは、データに基づいて相手の心理を読んだり、確率を計算したりするやろ」
「ああ、確かにそういった計算をよくするな」
「でも小春はそういう計算はせぇへん。何が起きたって対応できるからっちゅーことかも知れへんけど」
「確かに…自分のプレーによって相手がどう動くかよりも、その瞬間ごとに瞬時に分析して対応する側に徹しているような気がするな」
「せや。相手を笑かすために心理的な動きを読んだり、どの場面でどうボケれば笑いが取れるかの確率はよく計算するんやけどな」
「そうだな。あくまでも金色はお笑いテニスの中で生きている」
「ああ……、それで、やな」
「ん?」
「そのー…お前は、心理を読んだり、確率を計算することが得意やないか」
「ああ、そうだ。たった今、その話をしたばかりだが」
「あー…えっと……せやから…そのー…」
「………」
「こ、小春が……、あのー、なんや…」
「…金色小春が自分を好いている確率を聞きたいと思っている確率100%」
「ぐあっ!やっぱりバレとった!さすがやな!」
「顔に書いてあると揶揄したいほどひしひしと伝わってきたぞ」
「んんんん〜、仕方ないわな!ホレたもん負けや!」
「それで、その確率なんだが」
「ああああ、ちょい待ち!」
「なんだ」
「ちょ、心の準備が出来へん」
「ああ、いや心配ない」
「んあ?何が心配ない…まさか!もうラブラブすぎてデータが追いつかんっちゅーことか!?」
「待て一氏。そういうことじゃない」
「えっ?ほなら…どういうことや?」
「残念ながらその確率は俺にもわからないということだ」
「なんやて?」
「一氏、金色小春は正確にデータが採れない。なぜならば彼はお笑いに従事しすぎて、どこからがネタなのかが分からないからだ」
「どこからがネタなんかわからない…?」
「ああ。一部、オカマっぽくしているのも計算だという噂もある」
「いやいや、小春はネタなんかやないで。いつでもあんな感じやで」
「しかしキミは金色に怒られることがあるようだね」
「…あ、ああ。たまに、小春が本気で怒るねん。割と真面目に怒るから、そういう時は俺もリアルにへこむんやけど」
「そうか…ふふ…わかったぞ、一氏」
「…なにがや?」
「先ほども言ったが、俺には金色のキミに対する感情を測ることはできない。しかし!」
「おお、なんや突然大声出して」
「ふふふ…ふはははは!」
「な、なんやなんや。急激にお前のことが怖くなってきたわ」
 ガシッ!
「いった、ちょ、いきなり肩掴むなや!」
「いいか一氏!俺の見ている限りでは、金色小春は誰かに怒っているというデータが皆無だ!これが何を示すかわかるかな?もしかしたら、キミには本気で憤慨した姿を見せる…つまり、キミには心を許しているという可能性が大なんだ!」
「…こ、小春が…怒るのは俺だけ…?」
「ふははは!そうなんだよ!俺と蓮二にデータを照合してみても、金色が誰かに対して本気で怒っているところを見たことがない!キミは特別なんだ!自信を持ってもいいと思うよ!」
「………(ガタガタ)こは、小春が…俺を、特別…やて…!」
「さあ!そうと分かったら早速愛を囁くんだ!」
「おおっ!ホンマ…乾ってホンマええやつなんやな…!おおきにな!」
「ああ!気にするな!さあ早く!」
「おおきに!ホンマおおきに!」

 バタバタと部屋を出ていくユウジが振り返ると、乾は親指を立てたのだった。しかし後日、小春に怒られる乾の姿が多々目撃されたという。

































***

自分のデータや分析によって答えがわかったんだと思った瞬間、興奮しちゃうのが乾だと思っています。←
いつもよりアホらしい対談になってもうた。



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