「えーちーぜーん!」
 休憩時間に入るなり、よく聞き覚えのある声がこちらに近づいてきた。俺は机に突っ伏していた顔をあげる気もなく、そのまま寝たふりを続けることにした。相手をするのが面倒だ。
「なぁなぁ越前、起きてんだろー?」
 ところがそいつは肩を掴んで揺らしてくる。ガタガタ揺すられて、うざったく感じて眉間に皺が寄るのが自分でもわかった。
「……堀尾、うるさい」
 肩を掴んでいた手を振り払うように上半身をガバッとあげてひとこと言うと、堀尾が「うっ」と呻いてちょっとひるんだ。相変わらず繋がってる眉毛は、バーニングの時とそうでない時の河村先輩並みによく動く。でも正直、もうこの眉毛も見飽きてきた。
「そんな言い方ないだろー越前」
 ごまをするように手を擦り合わせながら、眉を下げて笑っている。
「…うざいんだけど」
「うざい!?ひっでーなぁ!」
堀尾が声をあげてみれば、周囲のクラスメイトたちが迷惑そうな顔をする。これもいつもの風景だ。もう見慣れた。あーあ、早く放課後にならないかな、今日は試合形式で練習するとか言ってたし、どうにかして不二先輩に時間を作ってもらおう。早いとこどっちが強いのか決着をつけたい。
「越前!お前ってやつは本当に口悪いよな!」
「真実言っただけじゃん」
「あー!なんだと!」
「はいはいわかったから。用ないなら俺行くよ」
 うるさい堀尾にかまっていると疲れるだけなので、どこに行く予定もなかったけどとりあえずこの場を離れたくて席を立つ。
「あ、違う違う、そうだ、俺越前に聞きたいことあったんだよ!」
 するといきなり堀尾が慌てだした。バンッと俺の机を手の平で叩いた。
「なに」
 めんどくさいので早めに話を終わらせるつもりで、座りなおすことなく返事をする。ちらりと視線をくれてやれば堀尾が割りと真剣な目つきでこちらを見ていた。
「あのさー、越前って英語得意だろ、どんくらいしゃべれるんだ?」
「……さあ?俺、英語歴12年だし」
 ところがあまりにくだらない質問だったので、言葉の最後でこれで終わりと言わんばかりに教室の扉のほうに歩き出す。
「ちょっ!待てよ越前!」
 すると後ろからアセアセとついてくる堀尾。廊下へ出るとカツオとカチローが窓の近くで立ち話をしていた。俺に気づくと、あ、リョーマくん。それだけ言って手を振ってきたので、とりあえず手をあげるだけで返事しといた。でも俺のすぐ後ろの堀尾に気がつくと、堀尾くん!またリョーマくんにつきまとってるの?とか、いい加減にしなよ、リョーマくん行くところあるんだから、とか、なんか色々言ってたけど堀尾はまとめて「うるさーい!」で返事してた。
「…you still have lots more to work on」
 ため息まじりに言うと、え、越前いまなんて言ったんだ?なぁ!なんて言ったんだよ!って余計に堀尾がうるさくなったけど、俺がわざと「あ、手塚部長」って言うと身体を硬直させて急におとなしくなった。バカだよな。
























***

初期作品に手を加えてみたけれども何も変わらなかったという悲しい事実。←





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