センチネルバースネタ
推しメンがガイドなセンチネルバースパロ。センチネルとガイドの設定を借りたくらいなので、本当に上辺だけ。頭を使わないただ推しメンたちが愛されている話を書きたかっただけなのに…。



WC決勝戦の興奮冷めやらぬ観客たちが、火照った身体を夜風で冷ましながら帰路につく頃。体育館のコートで白熱した試合を繰り広げていた選手たちは、舞台を変えてもう一つ乗り越えなければならない壁があった。
「火神くん、救護室に着きましたよ」
降旗と共に左右から支えていた黒子がそう言って肩を叩くと、ベッドに腰掛けた火神はガバリと彼の身体を腕に抱き込んだ。「おっと」とよろめいた黒子は何とか足を踏ん張って、火神の隣に座るためにゆっくりと腰を下ろす。
「大きな犬みたいだなぁ」
ポンポンと黒子が叩く大きな背中を見て、降旗は苦笑する。しょうがないと呟いて、黒子は肩口に擦り付けられる頭を柔く撫でた。
この世には、センチネルという超常感覚能力者がいる。五感のうち幾つか、あるいは全てが常人よりも鋭く発達した者たちのことだ。身体能力が大きく秀でているということでもないため、殊学生スポーツについては大した制限は設けられていない。あるとしたら、『センチネルの敏感になった感覚を鎮めることができるガイドの特性を持った学生、または指導員を配置することが望ましい』といった程度。
黒子は誠凛に所属するガイドで、引っ付いている火神は五感全てが異常発達したセンチネルだ。現在は白熱した決勝戦が引き金となり、五感の暴走が起こっているのだった。
そしてこれは、彼に限ったことではなくて。
「……困りましたね」
ポスリと背後から黒子の空いている右肩に頬を擦りつけてくるのは、ギュッと眉間に皺を寄せて目を閉じた伊月。背を丸めて座り込んだ木吉は、心配して声をかける福田たちに「大丈夫だ」と青い顔をして笑って見せる。
程度に差はあるが、この二人も揃ってセンチネルだった。そして、誠凛のガイドは黒子ただ一人。
普段の試合なら、人一倍頭に血が上りやすく、一番センチネルとしての特性が強い火神だけが、黒子のガイディングを受けることが多い。木吉も五感は発達しているがコントロールがうまく、伊月は視覚と触覚のみ秀でた所謂パーシャルなため、ここまで酷い状態に陥ったことはなかったのだ。
黒子も、帝光中では五人のセンチネルのガイドを務めていた経験はある。しかしその時はもう一人優秀なガイドがいたので、同時に複数人のガイディングは未経験だった。
「良ければ手伝おうか?」
すっかり黒子が困っていると、左右のベッドを隠していたカーテンが開いた。そこから顔を出したのは、海常の小堀と秀徳の高尾だ。
「高尾くん」
「よ、表彰式ぶり。優勝おめでとう」
ヒラリと手を振った高尾は、ベッドに片足を乗せる形で座っていた。その傍らでは緑間が仰向けで寝転がっている。二人の手が繋がれているところを見ると、軽いガイディングをしていたようだ。
「緑間、そんな無茶したようには見えなかったけど」
ベッドに横向きに座っていた小堀が、太腿の上に乗った頭を撫でながら言った。掴んだ小堀の手を額に固定した状態で、笠松は眠りについているようだった。
「いつものことっす。酷い暴走状態(ゾーニング)に陥る前に、真ちゃんは細目にガイディングしたい派なんで」
堅実な緑間らしいことだ。そういう笠松はどうかしたのかと高尾が問うと、小堀は小さく笑って頬を掻いた。
「黄瀬がいない分、気負い過ぎちゃったみたい。普通の身体的疲れの方が強いと思うよ」
よく見れば、待合席には並んで座る他のスターティングメンバーの姿があった。エースやキャプテンがこの調子では、会場を離れることができないのだろう。それは誠凛も一緒で、だから高尾たちは助力を申し出たのだ。
「真ちゃんのガイディングはすぐ終わるし、俺で良ければ手伝うよ」
「ありがとうございます。そう言えば、高尾くんはガイドだったんですね」
高尾は頷く。
「共感能力(エンパス)が強いんだよね、俺。眼が良いのは生まれつきだけど。そこを組み合わせて鷹の目を実現させてんの」
「成程。伊月先輩とは逆なんですね」
伊月は視覚と触覚のセンチネルだが、触覚の発達具合がガイドの共感能力に似た働きをするらしい。それを利用して、まだガイドがいなかった創設一年目に、応急処置的に木吉のガイディングをしたこともあったと聞いた。
「悪い、来るのが遅くなった」
駆け足で救護室に飛び込んできたのは、桐皇の諏佐と福田総合の石田だ。諏佐は羽織っていたジャケットを今吉に預けると、ポケットから取り出した名札を首にかけた。
「今日のここの担当、諏佐たちだったんだ」
「ああ。つい表彰式まで見ていたら、遅れてしまった」
小堀に「代わるよ」と声をかけながら、諏佐は木吉に手を差し出した。白い顔をしていた木吉は緩く首を動かし、諏佐の方へと倒れこむ。諏佐は驚いた降旗たちの力を借りながら、別の空いているベッドへと移動していった。
同じように首から名札を下げた石田が伊月に声をかけるが、彼はチラリと視線を向けただけで黒子の傍を離れようとしない。申し訳なく眉根を下げる黒子に苦笑しながら手を振り、石田はその場に膝を着くと伊月の手を握った。
各校一人はガイドを配置することが望ましいと言われていても、現実問題は難しい。ガイドは世界人口の一割ほどにしか満たないと言われているためだ。さらにセンチネルと違って、ガイドであるという自覚は得難く、ガイディングをするような場面に出会わなければ一生気づかずに過ごす者もいるという話もある。そのため、この国ではガイドと判明した国民は手厚い保護と特権を得る。代わりに、多くのセンチネルがゾーニングを起こす可能性のある大会やイベントには、こうして持ち回りで救護の役目が回って来るのだ。
それでも手が足りないときは、会場に来ている一般参加者に混じったガイドを呼び出す場合もある。今のように。
「手が足りないと呼ばれたんだが」
「さすが決勝戦アルな」
続いて入室してきたのは、霧崎第一の古橋と陽泉の劉だ。
古橋の姿とその後ろについてきていた他の霧崎メンバーを見つけ、日向たちは思わず顔を引きつらせてしまった。
「霧崎もいたのか」
「花宮たちと観戦していたんだ。それに、こういうときに協力することを条件にした特権だからな。無視はしないさ」
コートを脱いで、古橋は近くの椅子にそれを放った。
「外国人選手のガイドもいるんだ」
「ワタシも、ガイドを買われての留学アルから」
へぇと小金井は素直な声を漏らした。古橋と劉は辺りを見回して、ガイディングするべきセンチネルが、全てガイドの手に触れていることを確認して眉を顰める。
「手は足りているのか? 先ほどの放送では、センチネルが複数人倒れたと聞いたが」
「そりゃ、こいつらのことだ」
二人が塞いでいた入口から、退くように声が聞こえる。サッと古橋たちが身を引くと、渋い顔をした黛が、ぐったりとした赤司を半ば引きずりながら入って来た。その後ろから、実渕たち他のスタメンが、ベンチメンバーに支えながら続く。
「ったく、体力的には俺の方が少ないってのに」
ブツブツ文句を言いながら、黛は空いていたベッドへ赤司の身体を乱暴に放る。同じようにベッドに寝かされた実渕の手を取って、樋口は苦笑を溢した。
「四人か」
「ああ。洛山のガイドは俺と黛だけなんだ。結構無茶したみたいでゾーニング寸前だから、残り二人を頼みたい」
「了解アル」
劉と古橋は頷き、それぞれ根武谷と葉山のいるベッド方へ向かった。カーテンが閉じたことを確認して、黒子は左肩にすり寄る火神の頭をポンポンと叩く。
「どうですか、火神くん」
「んー……」
起床をぐずる幼子のように眉間に皺を寄せ、火神はゆっくりと目を開く。ここに来る前は爛々としていた瞳が、今は大分落ち着いていた。もう一方の肩にかかる重みも軽くなってきており、伊月の背筋が伸び始めていることを知らせている。
「おい」少し離れたカーテンから、黛が顔を出した。
「ひと段落ついたらこっち手伝ってくれ。コイツのガイディング、うまくいかねぇ」
「はあ」
すっかり寝息を立てる笠松を膝に乗せたまま、小堀が代わると申し出てくれたので、症状が軽くなった火神を彼へ預ける。伊月も顔色が良くなってきたので石田に任せると、黒子は黛の方へと向かった。
「赤司くんのガイディング、いつも黛さんがやっていたんですか?」
「ああ。樋口は去年からあの三人のガイディングやってるんだ。俺はこっち担当になってた」
黛と対面になるようにベッドの脇に椅子を持ってきて座り、黒子は静かに眠る赤司を見やった。帝光中にもゾーニング寸前の彼のガイディングをしたことはあるが、そこまで複雑な精神回路ではなかったと記憶している。赤司の左手を握って自分の額に寄せていた黛は、酷く怪訝な顔を上げた。
「……やっぱり、いつもと違う気がすんだよ」
「それって……」
試合の最中に赤司の身に起こったある事象と、関係あるのではないか。黒子が思わず黛を見やると、彼も同意見だったのだろう、ゆっくりと頷いた。
「もし俺とお前の考えが同じで、正しいのだとしたら、『今の赤司』のガイディングはお前の方が容易だろ」
「……まあ、『彼』のガイディングはやったことはありますけど……」
迷いつつも、黒子は赤司の右手を両手で握った。
「黛さんも、手伝ってくださいね」
黛は小さく息を吐きつつ、先ほどと同じように握った左手を額へ寄せた。それを見て、黒子も目を閉じると両手で包んだそれを口元へ寄せる。

「うわああ!!」
大きな叫び声と派手な物音で、黒子と黛は我に返った。ベッドへ視線を落とすと、苦悶の表情で眠っていた赤司の眉間の皺が取れて安定した寝息が聞こえてくる。それにホッとしていると、苛立った様子で黛がカーテンを開いた。
「うっせぇぞ、葉山!」
黛の背後から、黒子もカーテンの外を見やる。
入室時は顔面蒼白で脂汗をかいていた葉山だが、今はすっかり真っ赤になった顔で床に尻餅をついていた。彼が寝ていたカーテンの奥から、眉間に皺を寄せた古橋が何やら口元を拭いながら現れる。
「いきなり動くな、危ないだろ」
「おおおお、お前こそ! 何してんだよ!!」
樋口と劉のガイディングを受けて大分回復したらしい実渕と根武谷も、何事だと顔を出す。
「ちょっと、静かにしなさいよね」
「玲央ねぇ!」
顔を見るなり半泣きで抱き着いて来る葉山に、さすがの実渕たちも驚いて顔を見合わせた。劉がどこか呆れたような顔で、「どんなガイディングをしたアルか」と古橋に声をかけた。
「皮膚接触ではどうも効果が薄そうだったから、粘膜接触を」
ケロリとした顔で言って、古橋は自身の顎を指で叩いた。予想していた答えだったのか、劉は深くため息を吐く。
「日本人はそういうガイディングが流行っているアルか?」
「いやぁ……滅多にないかな」
劉に話を振られた小堀は言葉を濁す。「んなわけあるか」と斬り捨てたのは諏佐だ。
「そうほいほいと、粘膜接触のガイディングをするもんじゃないぞ」
石田も年長者の助言として、そう声をかける。古橋はどこかキョトンとした様子で目を瞬かせた。
「……花宮のガイディングはいつもこうして、」
「古橋、ステイ」
ムグ、と古橋の滑らかな口を、瀬戸が掌で物理的に止める。呆れや面白がるような目が、霧崎第一の集まる方へと向いた。
「それにしても、結構いるもんだな。ガイド」
場の空気を変えようとしてか、樋口が少し大きめの声でそう言った。
全国でも名のある強豪の運動部だ。部員数もそれなりに多い。一人か二人はガイドの部員を揃えておくことが、強豪の強みともなっている。
黛も、退部届を提出した際は樋口のようなマネージャーとして、部に残らないかと打診をされた。得てして、そういうガイドを兼ねたマネージャーは多いそうだ。黛の場合は、樋口よりも器用にガイディングをする技量も経験もなかったため、個性の強いセンチネルを相手にする自信と根気がないと断っていた。
「親世代の頃に比べてカミングアウトしやすくなったらしいしな」
「いろいろ特権と保護が整備されるようになって、自分からガイドか確認する人も増えたとも聞くね」
「まぁ、この国は結構ガイドの待遇は恵まれているアルな」
「ああ、途上国だといまだにセンチネルの奴隷扱いなんだっけ? 怖い怖い」
「そうそう。それに都市伝説だけど、途上国に売るためにガイドを誘拐する組織もあるって」
「本当だとしたら世も末だな」
「そうだなぁ」
呑気に顔を合わせてそんな世間話に興じるガイドたち。
彼らのお陰で精神的に回復したセンチネルと、一連の流れを観覧していたミュートたちは、思わず顔を見合わせてしまった。
「……お前らさ、」
「本当に気を付けろよ、そういう誘拐とか」
日向と宮地が、渋い顔をしながら声をかける。すると彼らはキョトンと効果音が付きそうな顔をして、首を傾いだ。
「まさか、早々そんな目には合わないですよ」
黒子の軽い言葉に、賛同するように声が上がる。
いや、本当に危機感持ってくれ。そう言い募る周囲の言葉が、最終的には頷いてくれた彼らにどの程度響いていたのか、もっと強く問い詰めるべきだった。



・・・・・・

35>1

と、いうことが先日ありまして


36人目の名無しさん

うんうん


37人目の名無しさん

それで?


38>1

現在、そのときのガイドたちが揃って、謎の船内で目を覚ましたところです。


39人目の名無しさん


40人目の名無しさん


41人目の名無しさん

はい、アウトー!!


42人目の名無しさん

フラグ回収乙!


43>1

受験生組は共通テスト終了後だったことに安心すべきか、数日後の第一志望の試験に焦るべきか葛藤しています。


44人目の名無しさん

いや、それよりももっとやばい状況に気が付いて


45人目の名無しさん

誰かー、ポリスメン呼んでー!!


46人目の名無しさん

ポリスメーェェェンン!!!!


47人目の名無しさん

誰がそんな原始的な呼び方しろって言ったよ



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テーマ「人外ファンタジー」
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