水晶の双像

・何か、最終的に自分の萌えポイントは百合百合な黛黒を、どっちも俺の嫁って感じで可愛がる赤司征十郎の赤×黛黒なんだろうなって思い始めてきました。
・いろいろ連動してしまう黛黒を書きたかったけど、あんまりうまくいかなかった。
・あと最近アニメ見返していて、伊月先輩かっこいいなって思ったので、月黒成分も多め(当社比)。ジョブはシーフとかなり迷ったけど、PG成分優先するとメイジかなって。


水晶宮。その名の通り、全面水晶で造られている塔だ。キラキラと日光を受けて輝くさまは美しくもあり、冷たさを孕んだその姿は不気味なほどでもある。それはそこに住まうものの存在も、大きく影響しているのだろう。水晶宮は、魔王の住む城だ。
水晶宮の最上階、下界を見下ろせる窓で四方を囲まれた部屋には、豪奢な天蓋で閉ざされたベッドが中央に設置されている。その天蓋の割広げ、魔王は枕元に腰を下ろしている。
「赤司!」
「ああ、キミたちか」
乱暴な音を立てて部屋にかけこんできた戦士たちを、魔王はついと一瞥しただけだった。天蓋の影に隠れていたものに、一番に気づいたのは視野が広いメイジだった。
「黒子!」
水晶宮へ進む道中、魔王の手によって捕らえられていた仲間が、静かに目を閉じて横たわっている。欠け布団を掛けられた様子はなく、無造作に横たわった彼は、安らかな眠りに落ちているように見えた。天蓋の隙間から見えるベッドには、どうやらもう一人横たわっている影があるようだった。そちらも気にかかるが、今はこちらの仲間を取り戻すことが先決だと、メイジは杖を構えた。
「下が騒がしいのは、キミたちの仲間か?」
魔王の知る戦士たちのパーティは、他にも数名メンバーがいた筈だ。今は魔王と競り合うほどの力を持った戦士と、パーティ内一視野が広いメイジだけが、部屋に飛び込んできている。
「ああ。ウチのガンナーたちが、そっちの幹部の相手をしている」
「そうか……まぁ、玲央たちに任せておけば大事ない」
魔王はずっとテイマーである彼に視線を向けたままだ。ボタンを外して露わになった首筋を、つ、と指でなぞる。意識のない身体はそれだけで反応し、ヒクリと喉仏が動いた。
「黒子から、離れろ!」
メイジの杖から、鋭いカマイタチが飛ぶ。それは魔王の足元と天井をそれぞれ傷つけ、バラバラと天蓋が崩れ落ちていく。魔王はそれも、無感動に眺めるだけだ。
「!」
戦士とメイジは息を飲んだ。天蓋が落ちたことで、テイマーの隣で眠っていた人影の顔が見えるようになったのだ。薄墨色の髪をした、青年。どことなく、仲間のテイマーと雰囲気が似ている。戦士がそう考えた瞬間、眠りについていると感じていた青年が「ん……」と首を動かした。
「……は?」
その動きは、隣で魔王の手によって身じろぐテイマーの動きと、同じだった。
魔王が喉から顎を擽ると、ヒクリと喉が上下する。柔く頬を撫でて額や耳元に垂れる髪を掬って、耳の骨を爪が弾くと「ん」と小さく声を漏らす。その声すら、合わせたように同じタイミングで漏れ出る。
「なんで……」
「この二人はね、同じなんだよ」
テイマーを愛撫する手を止めず、魔王は言葉を紡ぐ。
「命が繋がっている。僕が、そうした」
「まさか……! それは、禁術じゃないか!」
魔術に詳しいメイジが、声を荒げた。しかし魔王は平然としたまま「それは人間の法だろう」と事も無げに言った。
「命が繋がった者同士は、全てが同じだ。その命の終わりも、傷も、受ける感覚も……」
魔王の指が、テイマーの服の中へと入る。ピクンと肩が跳ねて、熱い息を吐くように唇がハクハクと動いた。
視てはいけないものを見てしまったような心地になって、戦士は思わず視線を床に落とした。しかしメイジはギリギリと杖を握りしめ、鋭い視線を魔王へと向ける。
「黒子は、返してもらう!」
「テツヤは僕のものだよ。今も昔も……千尋と同じく、ね」
メイジの怒りを受けてなお、魔王は薄く笑みを浮かべるだけだった。
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