クラムボンの花壇#1
・黒子、黛、諏佐、高尾、古橋、伊月が事件に巻き込まれる話の事件発覚編まで。
・ストーカーなモブ男が出ます。
・私は古橋をどうしたいんだろう。
・めちゃくちゃ好き勝手書きました。(懺悔)


頭が重い。痛みすらある。少しでも気を抜いたら喉までせり上がったモノを全て吐き出してしまいそうで、それだけは何とか避けたくていつも以上に固く口を結んだ。元々感情を大仰に表す方ではないので、そうしていても周囲に気取られることはない筈だ。
「――おい」
とん、と視界に黒い袖が入り込んだ。じっと手元を見つめていたため、不意をつかれたそれにビクリと肩が飛び上がる。顔を上げると、こちらを探るように見つめる瞳と目が合った。
「どうしたよ、ぼーっとして」
「ああ……いや、何でもない」
努めて平静に、指先の動きにも意識を向けてノートを閉じる。
「少し、寝不足かもしれない。次の時間、少し休んでくる」
「そうかよ。教師には適当に言っておくわ」
「頼む」
会話も短く、席を立つ。教室を出るまで、じとりとした視線が背中に貼りついていることに、気が付いていた。




黛千尋の元に赤司から連絡が入ったのは、高校の夏休みは明けて大学生は絶賛夏休み継続中のある日のこと。
「黒子の様子がおかしい?」
内容も内容だっただけに、黛は盛大に顔を顰めてしまったし、聞き返してしまった。そんな黛の表情を見て取ったかのように、電話口の赤司は『言いたいことは分かります』と苦笑した。
『最近メッセージの返信がそっけない……と、黄瀬から泣きつかれまして』
「アイツに対しては、いつもそうなんじゃないのか?」
『その可能性もあるんですけど……』
あるのかい。口に出さなかっただけ、黛はまだ彼に気を使えていると思う。
『黒子だけでなく、緑間もどうも様子がおかしくて』
「緑間……ていうと、高尾の」
『おや、黒子は親しくなったと聞いていましたが、彼もですか』
「いろいろあったんだよ」
面白がるような声色に、黛は自身の失言を悟った。クスクス笑いながら『何か機会があれば、黒子の様子を見てやってくれませんか?』と赤司は続けた。
「あー……」黛はチラリと机の上を見やる。そこにあるのは、黒子に借りた本だ。
「……まぁ、そう遠くないうちに会う用事がある、かも」
本を取り上げながら呟くと、電話の向こうの赤司は『おや』と今度こそ驚いたような声を溢した。


と、そんな会話をしてから一週間後。黛はどこかピリピリとした雰囲気の後輩二人と共に、某ファストフード店にいた。高尾が作成した『影同盟』グループに、黒子に宛ててメッセージを送ると、思いのほか簡単に高尾も便乗してきたのだ。彼らの部活が終わった頃の時間に約束を取り付け、そして現在。
小腹が空いたのでバーガーを注文し、黛はそれを頬張りながら目を合わせようとしない黒子たちを眺める。
「何かあったのか?」
「……」
「赤司が心配していたぞ。卒業した俺に連絡するくらいには。緑間と黒子の様子がおかしいって」
さすがに話が進まないと思って赤司の名前を出すと、黒子は分かりやすくバツが悪そうに顔を顰めた。高尾も眉間に皺を寄せて、尖らせた口でストローを加える。
「実は……」
先に事情を口にしたのは、黒子だった。
「脅迫状?」
思わず声を裏返した黛は、ハッとしてすぐに声を潜めた。
「マジかよ」
黒子はコクリと頷き、高尾も苦い顔をしてストローを噛んだ。
「去年のWCで随分目立ったので、まあそういうこともあるだろうとカントクたちは言ってますけど。いい気分ではないですよ」
シェイクのストローを回しながら、黒子はぼやく。無表情なので分かりづらいが、彼も相当腹に据えかねているらしい。
「どんな内容?」
「『WC出場を辞退しろ』『弱小校が思い上がるな』……とまぁ、そんな感じの」
「うちも似たようなもん」
弱小校云々は、的外れな意見だと思ったのか書いてなかったが。そう付け加えて、高尾はポテトを齧る。
「脅迫状だけならまだしも、地味な嫌がらせも続いていて……」
「練習前にその片付けしてからだから、心身共に集中できないでしょ?」
さすがに自校でのことを他校の友人に相談し辛く、曖昧に誤魔化した態度を赤司に『おかしい』と判じられたというところか。
友達思いでご苦労なことだな、心中でぼやいて、黛は空になったカップを乱暴にゴミ箱へ放り込んだ。

「ていうか、それどう赤司に説明すればいいんだよ」
ファストフード店を出て公園内の道を通りながら、黛はため息を吐いた。隣を歩く黒子は呑気に「律儀に報告しなくても良いのでは?」なんて言ってくれるが、向こうから連絡が来ればそうもいかない。黛まで適当な誤魔化しをしてしまえば、一度懐に入れた相手に情を持ちやすい赤司だ、どんな策を講じて来るか分かったものではない。
「あ、俺こっちなんで」
生垣の隙間から駅の明かりを見つけた高尾は、ビシリと敬礼をしてから軽い足取りでそちらへ向かっていく。サマーカーディガンの隙間から見えた、肌を覆う白に黛は目を細めた。
「……」
「……嫌がらせ、結構えぐいものもあるみたいで」
足を止めていた黛の隣で、黒子が口を開く。
「カントクは、関東校のどこかを勝たせるためにやっているんじゃないかって」
「ああ……成程」
それで去年のWCからIHにかけて目立った強豪校を狙っているわけか。これは他の関東校も被害にあっている可能性がある。しかし、と同時に思う。誠凛は今年のIH、本戦には出場したがWCほど目立った成績というわけではない。昨年度のWC後すぐに何かしらアクションを起こすなら分かるが、IHが終わったこのタイミングで誠凛に嫌がらせをしようと考えるだろうか。
(徹底的に叩き潰すため、か? よっぽど性質が悪い犯人なのか……それとも、別の目的があって……)
がさ、と大きな音が近くから立った。思考の海に沈みかけていた黛はハッと我に返った。それよりも早く傍らにいた黒子が反応した。
「高尾くん!」
高尾の身体が、ダラリと生垣に凭れかかるようにして倒れている。この数秒で何があった、と目を見張った黛は、視界の端を過った影に息を飲んだ。
「黒子!」
「え」
高尾に駆け寄ろうとしていた黒子の腕を引き、半身になって自分の身体で壁を作る。それは直感的な反射であり、それ以上の策も何もなかった。それは、黛の失策だ。
「っ!」
「まゆずみ、さ、」
バチリ、と神経を焼くような痛みに、意識が刈り取られていく。薄くなる視界の中、こちらを見つめる黒子の背後に、黒い影を見た。

「ん?」
何か物音がした気がして、伊月は足を止めた。駅の前にある、公園の方だ。生垣に囲まれているだけでなく、木々の多いそこは、街灯があると言えど夜が深くなると薄暗くて人気もなくなる。そういう場所は避けるようカントクから言い含められていたが、先ほど広い自分の視野に映り込んだ影が気になった。
チラリと辺りを伺いつつ、伊月は音が聞こえて影が見えた方へ近づいた。
「!」
そこで彼は見つける。見覚えのある鞄と携帯。拾い上げたそれを見て、自分の予想が外れていなかったことを悟る。
「くろ、こ……?」


『桐皇に嫌がらせ? それはまぁ……何とも命知らずな』
「それどういう意味やねん」
『ていうか、なんでお前がそんなこと知ってるんだよ』
「若松から泣きつかれたんよ」
ああ成程、と電話口の相手は納得したようだ。
『で、後輩思いなOBさまは何か考えがあるのか?』
「まぁ、いろいろと、な」
うわぁ、とドン引きを隠しもしない声が聞こえたが、無視をする。クルリと今吉はペンを回し、話を続ける。
「ちょっと探りを入れたら、誠凛と秀徳も被害にあっているらしいねん」
『今度のWCに出場確定校か。ライバル校を蹴落とすことが目的か?』
「それにしてはなぁ、何となく違和感があるねん」
『違和感?』
おん、と今吉が肯定を返すと、沈黙が落ちた。「諏佐?」と声をかけると、『すまん』と少し早口に返事が来る。
『ちょっと知り合い見つけた。また後でかけ直す。――』
「お、おん」
今吉の返事を全て待たず、ブチリと通話が切れる。完全に切れる間際、微かに聞こえたのが、知人の名前だろうか。今吉は眉間に皺を寄せて、通話終了を告げる電子画面を見つめる。ざわりと、何となく嫌な予感が今吉の胸を撫でた。
そのときの通話相手、諏佐の行方が分からなくなったと今吉の元に連絡が来たのは、その翌日のことだ。


黒子が目覚めると、白い光が目を焼いた。
「起きたか」
「黛、さん……」
「起きたならさっさと退け」
え、と思う間もなく、黒子は肩を押された。咄嗟に手をついて身体を起こし、今まで寝ていた方を振り返る。痺れたとぼやきながら、黛が曲げた膝を伸ばしていた。
辺りを見回すと、コンクリートで四方を囲まれたシンプルな部屋だ。少し手の平をついただけでもザラリとした埃と砂の感触と冷たさがあって、人が過ごすように整えられた場所でないことを知らせている。
最後に裸電球を見やって、黒子は黛をマジマジと見つめた。
「何だよ」
「いえ……ありがとうございます」
礼を言うと、黛は盛大に顔を顰めた。
「ダメだな。扉は開かねぇ」
「窓も打ち付けられているし、こりゃ打つ手なしっすね」
別の方向から声が聞こえてきて、黒子はハッとして振り返った。
「諏佐さん、高尾くん」
「よ、起きたか」
「怪我はなさそうだな」
そこで黒子は、意識を失う前の記憶を思い出した。
「高尾くんも黛さんも、マジバから帰り道で誰かに襲われたんでしたね」
「ああ。俺を運べたってことは余程の剛力か、複数犯だな」
「諏佐さんは……」
「俺も大学からの帰り道に襲われた。ただ、そのとき連れがいてな……そいつは見逃されたのか、どうなったのか気になっている」
「ていうか、このメンツを誘拐して、犯人の目的は何なんすかね?」
「……嫌がらせ」
ポツリと、黒子は呟く。三人の視線が、黒子へと向く。
「誠凛と秀徳で最近続く嫌がらせ、その延長線かもしれません」
「それ、今吉も同じ話をしていた。桐皇にも、脅迫状やボールに穴開けたりする嫌がらせがあるって」
全くない話ではない。黒子も高尾も、去年のWCで注目された選手だ。だが諏佐は既に高校を卒業したOBだし、黛に至っては関西圏の高校出身だ。
「洛山にも嫌がらせがあったのか……? いや、それなら赤司が態度の可笑しい緑間たちの事情を察した筈だ。わざわざ俺に連絡するわけない」
「僕らの誘拐現場に居合わせたから、とかですか?」
「一八〇越えの大学生を二人もわざわざ運ぶか? 複数犯だとしてもだ。一か所に閉じ込めているのも、脱出される確率を上げているだけのような気がする」
「俺や黛も拉致され、四人とも同じ場所に閉じ込められているのは、嫌がらせ以外の目的があるってことか」
鞄はあるが、財布や連絡手段となる携帯は見当たらなかった。外部と連絡がとれない。完全に手詰まりだと黛は歯を噛みしめた。
ぎぃ。
「!」
錆びた鉄扉が音を立てて開く。咄嗟に黛と諏佐は黒子と高尾の前に立った。
室外に電灯はないのか、黒い闇が扉の隙間から見える。ゴクリと唾を飲み込んで、そこから現れるものをじっと待った。ずるり、と闇から抜け出るように頭から部屋に入って来た人物に、黛の背後に立っていた黒子の喉がヒュウと鳴った。
「伊月先輩!」
どさり、と受け身もとらず砂埃の床に倒れたのは、黛もいつかの試合で何度かマッチアップした誠凛のポイントガードだった。気絶しているのか、眉間に皺を寄せた伊月は起き上がる様子も瞼を開く素振りもない。そちらへ駆け寄ろうとした黒子の腕を黛が引いて止めたのは、扉の奥からさらに人の気配を感じたからだ。
「あ、もう起きてたのか」
伊月の身体を扉に引っかからない位置へ足で押しやり、その男は自然な動作で部屋に入って来る。その肩腕は、一人の青年の手首を掴んでいた。
「古橋!」
諏佐が思わず声を上げる。黒々とした瞳はどこを見つめているのか分からない。それでも首を少し動かして、視野に諏佐たちを捉えたようだった。微かに、息を飲んだ音がした。
「尾行されたからって、余計な人数増やしてサァ。誠凛はもう一人いるってのに。やっぱり闇サイトで募集した奴らは微妙だなぁ」
身長は古橋と同じくらい、一八〇後半といったところか。諏佐よりは低い。体格も、鍛えているようには見えない。諏佐と黛二人でタックルでもすれば、簡単に突破できそうだ。
しかし、あの黒い廊下の奥にまだ仲間が潜んでいる可能性は捨てきれないし、男自身スタンガンのような武器を持っているかもしれない。それに、床に転がったままの伊月も抱えて、腕を捕まれている古橋も取り返して逃走するには、タイミングを見計らう必要がある。
黛がそんなことを考えながらチラリと諏佐を見やると、諏佐はそのアイコンタクトの意味を悟ったのか小さく頷いた。しかし、すぐに顔色を変えて首を振る。
黛が眉を顰めていると、男は「まあいっか」と呟いた。
「これで一応揃ったよね、古橋くん」
男に名前を呼ばれ、古橋は諏佐たちから視線を逸らした。
「……何を考えている?」
低く、ゆっくりと、古橋は口を動かした。
「ん? 君の学校と因縁のある誠凛。去年はボロ負けしちゃった秀徳。この二校のアキレス腱である選手を潰せば、次のWCは霧崎が関東代表にいけるでしょ?」
「そのために? じゃあ、後の二人は?」
「なぁんか、最近の古橋くん、あの二人と買い物行ったりしてたでしょ。ちょっとジェラっちゃった」
「はあ……」
買い物、と言われて黛が思い当たるのは小堀たちの家で食事会をしたときの買い出しだ。それ以外、古橋と外で会った覚えはない。諏佐は彼の家庭教師をしているから、自宅を訪ねることだってあるだろう。しかし、それだけだ。ただの友人知人関係でしかない。そもそも、黛は男のことなんて今の今まで知らなかった。
(つまりこの男、古橋のストーカーかよ……!)
ゾワリ、と言いようのない気味の悪さが黛の背中を駆け上がった。ニヤニヤとした笑顔を今すぐ拳で殴りたい。
「やり方はいろいろあるよ。学校にまた脅迫状を送るでもいいし、もっと分かりやすい方法でもいいし」
古橋は微かに視線を左へ動かし、左の二の腕を右手で摩る。
「……!」
「……別に俺は、興味ない。無駄なことは嫌いなんだ」
「そう?」
「試合欠場だけでも、十分だ」
男は聊か納得しかねる様子だったが、古橋がそう言うならと笑みを浮かべた。それから腕を掴んでいた手を離して、それを古橋の肩へと回した。ピクリと目が丸くなり、指先が微かに強張る。それでも古橋は口端を一ミリも動かさず、黒い瞳を男へ向けた。
「じゃあまあ、暫くはここに置いておこうかな」
古橋を引きずるように引っ張って、男は部屋を出ていく。黛たちが一歩も動けないまま扉はしまり――がチャン、と重々しい施錠音が部屋に響いた。

「「きっも!」
男が退室して数分後、漸くまともに呼吸をできるようになって黛が発したのは、その二文字だった。黒子は伊月を抱き起こし、黛がしてくれたように自身の上着や足を使って彼の身体が冷えないようにする。
「高尾!」
諏佐は先ほどから背後に庇っていた高尾が、服を掴んで来ていたことに違和感を覚えていた。そのため男が去ってからすぐ声をかけたのだが反応がない。視線をやると、高尾がズルズルと滑るように膝をつき始めた。上がった息と汗をかいた額を見て、熱があることに気が付き、諏佐は自分のジャケットで彼を包んだ。
「風邪でもひいていたのか?」
「いや……諏佐、そいつの右腕確認してみろ」
黛の言う通り袖を捲った諏佐は、息をのむ。彼の上腕に、包帯が巻かれていた。傷口が開いたようで、今は真っ赤になっている。
「炎症もおきてたのか。まさかこれで普通に練習でたのかよ」
「僕のバック、タオルが入っています」
一度使ってしまっているが、止血には使えるだろう。諏佐は有難く黒子のバックからタオルを取り出すと、赤くなった包帯の上からきつく結んだ。
「ったく、状況悪化しまくってんじゃねぇか」
「古橋も心配だ……」
「古橋さん、何かあったんですかね……」
伊月の様子を観察しつつ、ぽつりと黒子が呟いた。
「まぁ、何かなきゃ、あんなきもい奴に引っ付かれたまんまをよしとしねぇだろうな」
「まぁそうなんですけど」
黒子は少し苦みを感じているように、口を歪めた。
「古橋さん、何かを思い出すときに視線を左へ向けがちなんです。さっき、それと同じ視線の動かし方をしていました。それに、腕を組もうとしていた」
「防衛反応か……」
視野誘導の習得の際、ある程度の人間の心理反応をかじった黛も呟く。
「アイツ自身も、何かで脅されている可能性があるってことか」
諏佐はギリと歯を噛みしめ、彼らが消えていった扉を睨んだ。

す、と他人の掌が肩を撫でる。ビクリと飛び跳ねたそれを見て、背後からクツクツと笑い声が聞こえた。
「手紙を無視されたと思ったからさ、今回は応えてくれて嬉しいよ」
両肩に乗った手が、重い。柔らかいソファが、ずるずると昏い底へ引きずりこみそうな感覚がして、古橋は浅くしか腰掛けられないでいた。
(手紙……)
――赤い液体。同じもので濡れた、チームメイトの腕とリノリウムの床に転がる銀の欠片。一瞬のうちに脳裏をよぎった光景に、古橋は奥歯を噛んだ。
(……ザキ……原……)
「気が、つかなかった」
ぐ、と鎖骨をなぞっていた指が喉仏にかかる。少し息が詰まったが、それ以上力を加える様子もなく、少し爪を立ててから離れていった。
「……そう。でも、もういいや」
パッと古橋の身体から両手は離れていく。背後の気配も遠ざかっていって、男が別の作業のために部屋を出て行ったのだと分かった。
ゆっくりと、息を吐く。沈み込んだ腰は、暫く持ち上げられそうにない。そもそも、古橋はこの家の間取りも、現在地もさっぱり分かっていなかったから、部屋を出ることができても難しいだろう。
カタ、と骨が鳴る。口を引き結んでそれを抑え込み、古橋は上体を屈めると絡めた指を額へ押し当てた。
(花宮……瀬戸)
頭の中でさえ明確に呟けない四文字を、古橋は歯で噛み潰した。
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