陰陽寮の日常茶飯事
「頼むぜ、灰原〜」
「お断り」
素気無く切り捨てられ、コナンは唇を尖らせた。髪の端に雪の結晶をつけた少女は、腕を組んでフンと鼻を鳴らす。
「あのねぇ、あなたがいつも飲んでるアイスコーヒーの氷は、私の妖力がこめてあるの。そう一日に何度も作れるわけないでしょ」
「それは分かってるよ。ただもう少し量を増やしてくれって話で……」
「どうせ大量摂取したって根本的な呪解にはならないんだから、もう少し辛抱なさい」
コナンはすっかり肩を落として、ゴロリと畳の上で横になった。
「あれから百鬼夜行の情報は全くないし……俺はいつになったら元の生活に戻れるんだ」
江戸川コナンは、元々小説家の父と女優の母を持つごく一般的な青年だった。少なくとも、妖怪や陰陽師と関わることない生活を送っていた。しかしある日、幼馴染の少女と出かけた先の祭りで、百鬼夜行と遭遇し、呪いを受けてしまう。その結果、時の輪廻から外れた子どもの姿になってしまったというわけだ。
「その身体でできることは限られているでしょ。大人しくあの人たちに任せたら?」
「まぁ、そうなんだけど……」
頬を掻きながら、コナンはチラリと縁側から覗く庭を見やる。よく整えられた庭園で、赤井と降谷が向かい合って何か話している――いや、降谷が一方的にキャンキャン噛みついているだけかもしれない。
「……大丈夫かな」
「さあね」
我関せず。ツンと澄ました顔で灰原はお茶を啜る。コナンは思わず引きつった笑みをこぼした。
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