12:しずんでいくゆうひ
夕陽の赤。最近、それを見上げるたびにとある人物を思い出すようになってしまった。
傾いた夕陽が地面を染め上げる色と、同じ髪色を持つ同級生。少し癖のあるそれを揺らしながら、小首を少し傾げてこちらを見やる顔。その頬にも夕陽が射して、ほんのり茜色になる。
そんな風景が目蓋の裏に鮮やかによみがえり、綱吉は頭を抱えてベッドに転がった。枕に後頭部を押し付けて、バタバタと足を動かす。布団がボフボフと音を立てて埃が少し舞ったので、家庭教師から「うるせぇぞ」と背中に蹴りを一発もらうはめになった。
ジーンと響く痛みに呻きながら、綱吉は目元に翳した指の間から、天井を見上げる。
――ツナくん。
茜色の光が射し入る薄暗い天井。姿だけでなく声まで思い出してしまうなんて、すっかりやられてしまっている。
(それもこれも、エンマがずるいせいだ)
いつものへにょんとした小動物のような顔で、綱吉の予想外の言葉を告げた彼。出会った当初にあったおどおどとした態度は、最近はすっかり成りを潜めていた。しかしそれを差し引いても、あのときの彼の堂々とした様子といったら!
「〜っぅく……」
グッと目元を手で抑え、綱吉は唇を噛みしめる。零れた声は無意味な音となり、その様子にすっかり呆れた様子の家庭教師はため息を吐いて部屋を出て行った。
一人になった部屋で、綱吉はまたソロリと顔を上げる。手を取り払った視界に映ったのは、世界全てを染め上げるような赤。
――大空と同じ色に、大地が唯一染まる時間帯。
ぼふん、と綱吉は再び枕に顔を埋めた。
「……まいったな……」
きっと今の自分の顔は、あのときと同じような色になっているのだろう。それを見て満足げに微笑む炎真の顔をまた思い出して、カァと頬が熱くなった。
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