09:なついろ
少しずつ冬の色が深まる頃、炎真は沢田綱吉と出会った。
すれ違いから始まった戦いと、和解後に巻き込まれた戦い。それら全てが終わる頃には年も終わりかけており、炎真は冬休みに向けたテストと補習に追われることになった。それは綱吉も同じだったのだが。
「おわ、った……」
プシューと煙の出そうな頭を机にくっつけ、綱吉は脱力する。炎真もフラフラする頭を何とか支えながら、ノートと教科書を鞄へしまった。
二人の成果であるプリントを浚った教師は、満足げにそれを見て「これで無事冬休みが迎えられるな」という言葉を贈ってから教室を出ている。
「はあ、さすがに年末まで補習三昧じゃないだけいいか……」
冷たい机で頬を冷ました綱吉に、炎真も同意して頷いた。
「エンマは冬休み何か予定あるの?」
「んー、特には」
里帰りする場所はあっても、待つ人のいないシモンだ。ならば、親しくしている人が多い並盛に留まる方が楽しいと炎真は思う。
「ツナくんは?」
「そういわれると、俺も特になにも。冬休みって、夏休みほど長くないからね」
「夏休み……」
転学時期の関係で、炎真が綱吉と過ごす季節はまだ一つめだ。そうか、これから他の季節も彼と共に過ごすことができるのかと思うと、炎真の胸がトクンと動いた。
「……夏休みは、何してたの?」
「えー、普通だよ。海行ったり、プール行ったり、夏祭りに行ったり」
机に肘をついて、綱吉は指を折る。
この七年間、無気力に復讐の道を言われるまま歩いていた炎真には、縁遠い場所だ。炎真の顔でそれを察したのか、綱吉は少し気まずそうに口を閉じた。
「……楽しそうだね」
「楽しかったよ。――きっと、来年はもっと楽しい」
え、と目を瞬かせる炎真へ、綱吉はニッコリと微笑んで見せた。
「シモンのみんなも一緒に行こう」
獄寺はシットピーの夏の過ごし方について興味津々だろうし、山本は水野と爽やかな汗を流しそうだし、了平と紅葉は浜辺だろうとプールだろうと競争を始めるかもしれないし、ランボはらうじと行くプールを思いっきり満喫するだろう。雲雀は難しいだろうが、クロームを誘えばジュリーとアーデルハイトも芋づる式に誘うことができそうだ。
それらが炎真の脳裏にもはっきり思い描くことができて、思わずプッと笑みがこぼれた。
「うん、楽しそう」
「でしょ」
「でも僕、泳げないんだ」
「俺も」
また顔を見合わせて、綱吉と炎真は笑った。
季節は冬。思い描く風景はまだ先のことだが、その色は想像通り鮮やかに炎真たちの風景を彩ることだろう。
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テーマ「人外ファンタジー」
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