07:こもれび
「ここにいたのか、軟弱エンマ」
パチン、と眠気が弾ける。声に頭を小突かれた炎真は、眠い目を擦って顔を上げた。
並盛神社をグルリと囲む木々の中、根っこでできた丁度良い椅子と幹の背もたれに身体を預けていた炎真。隣にいた綱吉の肩に頭を乗せて、一緒に眠りこけていたらしい。
炎真より少し先に目覚めていた綱吉は、顎のあたりを手で擦っていた。
「沢田ではないか」
炎真を起こした紅葉の後ろから、了平が顔を出す。綱吉は目を瞬かせ「お兄さん」と彼を呼んだ。
炎真と綱吉、二人の放課後の寄り道先にして久しい並盛神社。そんなところでこの二人と遭遇するとは思わなかった。炎真も驚いている。
「結局、こいつがロードワークについてきただけだ」
「なにおう! 貴様が俺の道行く先に現れただけだ!」
どちらが追従したかを争う二人に、炎真は相変わらずだなとため息を吐いた。
「エンマはまた寄り道か」
「うん」
「それで昼寝するとは、相変わらず軟弱め。結局、アーデルが口煩いぞ」
腕を組み、紅葉は深々と息を吐く。痛いところを突かれた、と炎真は頬を掻いた。
「お前もだ、沢田。こんなところで転寝するとは、極限鍛錬が足りん!」
「あはは、すみません」
苦く笑って、綱吉は頭を掻く。それから少し天を仰いで「だって」と口を開いた。
「この時間のこの場所、太陽が暖かくって気持ちよくて」
ぴく、と了平の耳が僅かに動く。
炎真は綱吉に同意して首を縦に振った。
「木の葉の影が涼しくて、風も気持ちいいんだ」
くん、と今度は紅葉の鼻が動く。
炎真の意見に綱吉も「そうそう」と頷く。頷き合った二人は、ふとこちらを見下ろす先輩たちの様子に気が付いて顔を上げた。
「お兄さん?」
「紅葉?」
「む?」
「んん」
ムズムズと芋虫のように動く唇を引き結んだ了平と、頻りに組んだ腕の指で叩く紅葉。綱吉と炎真は、揃って首を傾げる。
「極限、沢田! 次もここで休息をとるようなら、俺に声をかけろ!」
「は、はあ」
「結局、エンマ。軟弱なお前が風邪を引かぬよう、また様子を見に来てやる」
「あ、そう」
さっきと食い違う言葉に、綱吉と炎真は顔を見合わせた。二人の反応を気にせず、了平と紅葉は「極限!」「結局!」と口癖を声高々に叫びながら肩を並べて駆け出した。
「何だったんだろう」
「さあ」
困惑を言葉で表す綱吉とは対照的に、炎真はまたこみ上げてきた眠気の方に意識を引かれる。大きく欠伸をする炎真に綱吉は苦笑して、肩に乗ってきた赤い頭をポスリと撫でた。
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